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梶 芽衣子「『女囚さそり』のナミを経て、また歌い始める理由」

クローズアップ

 

 昨年末、28年続いた『鬼平犯科帳』で密偵のおまさを演じきった梶芽衣子さんが、3月22日にシングル『凜』を発売する。俳優として52年の芸歴をもつ梶さんには100曲超の持ち歌がある。だがその殆どは「歌手活動」から生まれたものではなかった。

「私の代表曲『怨み節』も、もともとは映画『女囚701号 さそり』の劇中歌でした。詞は伊藤俊也監督ですから、世界観は合いました。演歌調の歌謡曲を、監督からは『三上寛のように歌って』と。当時、三上さんを存じ上げなかったんですが、歌を聴いたら“殴る蹴る”ような歌い方で(笑)。それで、主人公のナミとして吐き捨てるように歌ったら、OKが出たの」

 劇場公開は72年の夏。

「ことのほかヒットしたため、すぐに2作目を年末の正月映画として製作することが決まりました。すると、“『怨み節』がどうしてレコードになってないのか?”とファンの声が集まり、急きょ2作目の公開と同時にレコードを発売したら、120万枚も売れたんです。『女囚さそり』は女性ファンも多くて。男に怨みつらみを持った、女の応援歌だったのかもしれませんね」

 ヒットを受け、梶さんの俳優人生は大きく変わる。その後の曲もすべて“怨み節路線”で、それを売れなくなるまで続けることが会社の方針に。

「あのころ、映画は週に2本撮影して、終わればレコーディング。移動の車中はセリフか歌を覚える場所で、脚を伸ばして寝た記憶もありません。私のイメージに合いすぎて、売れるほど孤独感も強まって。あんまりレコーディングが多いから会社に訊いたら、年間60曲の契約が結ばれていたの。同じ調子の歌ばかりで気持ちが消耗して、芝居に集中できなくなっていった。だから84年に歌をやめたんです」

 歌手活動を再開したのは、それから25年後のことだ。

「ふと役者の現状に甘んじてる、緊張感を失っていると思ったの。思い出したのは歌に臨むときの気持ち。芝居は役者の感性で間を作るものだけど、歌の間を決めるのは音符で、1曲通して表現力が求められる。そこに緊張感がある。だから歌おうと決めたんです」

 11年にはジャズやボサノバ、ブルースなどを収録したアルバム『あいつの好きそなブルース』を発表した。新曲『凜』は、ロックバラードだ。

「自分の年齢からするとロックなんて考えられなかった。でもいくつになっても挑戦するのは大事だし、仕事を続ける限り新しい未来は築ける。だからロックバージョンの『怨み節』も入っています。誕生日の3月24日は青山RizMでライブを、そして雑誌『オール讀物』4月号からは、役者人生を振り返る連載も始めます。芝居と歌の新しい表現に繋がることを、どんどんやっていきたいですね」

かじめいこ/1947年生まれ。65年デビュー。70年~『野良猫ロック』、72年~『女囚さそり』シリーズスタート。89年~テレビ時代劇『鬼平犯科帳』など多数出演。クエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル』では梶さんの『怨み節』『修羅の花』が使われたことで世界的に注目された。

INFORMATION
 

『凜』 3月22日発売(1500円+税)
テイチクエンタテインメント
3月24日(金)青山RizMでライブ開催

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