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連載クローズアップ

川内 イオ
2017/03/13

“空き駐車場シェアサービス”を軌道に乗せた、若き社長の地道な戦略

金谷元気ーークローズアップ

©akippa

 きっかけは、停電だった。22歳までプロサッカー選手を目指していたものの断念した金谷元気さんは、24歳で起業。携帯電話の販売やインターネット求人広告を手掛けていたが、予想以上に多い顧客からのクレームや不満に悩まされていた。「何のために仕事をしているのか」とモヤモヤしていた2013年のある日、停電で真っ暗になった家の中で、こう思い立った。

「電気は人の暮らしに必要不可欠だ。僕も世の中になくてはならないサービスを作ろう」

 金谷さんは30人ほどいた社員に呼び掛けて、全員で「自分が困っていること」を書き出した。出てきた200以上の課題の中から生まれたのが、空き駐車場シェアサービスの「akippa(アキッパ)」だ。

 交通量の多い地域で車を運転していて、駐車場が見つからない、見つかっても満車だったということはないだろうか? アキッパは首都圏、関西で普段使われていない個人宅や空き枠がある月極の駐車場と契約し、オンラインで駐車場を検索・予約することができるサービス。ドライバーは15分単位で予約でき、オンライン決済なので面倒な現金のやり取りも必要ない。

 料金は地域のパーキングの半額~3割引き程度に設定しており、利便性と価格から利用者が急増。2014年4月のサービス開始から3年で、会員数は数十万人に達した。

akippa駐車場(上)とアプリ

 まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのアキッパだが、金谷さんが構想を打ち明けた当初、社員は「それで食べていけるのか」と不安と不満を隠さなかったという。そこで、金谷さんが社内で一番営業成績が悪かった社員とふたりだけで駐車場の確保を始めたところ、すぐに手ごたえを得た。

「自転車で走り回って月極駐車場を見つけてはオーナーに電話をして、ということを繰り返していたのですが、営業が苦手なはずの社員もどんどん契約を取ってきたので、これはいけると思いましたね」

 駐車場の持ち主からすれば、自分の手を煩わせることなく空いているスペースを活用してくれるのだから、断る理由もない。登録駐車場の数もうなぎ上りで、今年2月時点で駐車場サービスでは3位となる約9000拠点を誇る。

 昨秋から、新たな試みも始めた。郊外に大きな駐車場を持っている店舗や事業者と提携。駐車場を提供してもらう代わりに、その駐車場を予約したユーザーにクーポン券を発行する。このサービスはまだ始めたばかりだが、紳士服店、寿司チェーン店など関心を示す企業は多いという。

「最近は空き家の駐車場の活用も検討しています。今年中に拠点数で1位を取って、いずれは5万拠点を目指したいですね。東京五輪までに外国語に対応して、海外進出にもつなげたいと思っています」

かなやげんき/1984年生まれ。小学生の時にサッカーを始め、高校卒業後はJ2ザスパ草津の練習生にもなったがプロになる夢は叶わず、24歳で起業。昨秋、セレッソ大阪と提携したが、これはサッカー選手時代のつながりが縁となった。現在、トヨタや住友商事といった企業とも提携を進める。