昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

MEGASTOPPER DOMI
2017/03/15

【オリックス】音楽界のドラマー不足と若手捕手の育成問題は似ている

文春野球コラム ペナントレース2017

音楽界にドラマーが不足するように捕手の育成は難しい

 バンドを組んだ経験のある方なら何となく分かるかもしれないが、基本的なバンド編成に必要なメンバーの中でドラマーが圧倒的に奏者人口が少ない。特にアマチュアバンドに於いてはそれが顕著に表れており、ドラマー脱退後すぐには次のドラマーが見つからず長くバンド活動の足止めを食うバンドがいかに多い事か。これがベーシストであれば、苦肉の策としてギタリストからの転向も考えられる。ギタリストが脱退してもギタリストなら余るほど居る。

 えっ? 何の話をしてるのかって? 分かっている、分かっているから、これが野球コラムだという事も理解しているから少し待って……。

 ドラムスの特性として、弦楽器や鍵盤楽器に比べ他の楽器への応用がききにくく専門職の色合いが濃くなる。その上ステージでは一番後ろに配置される事が多く、ボーカリストの陰にスッポリと隠れてしまう事も多々あるのだ。そんな境遇で良いドラマーが溢れる程育つ訳もなく、バンド界、特に日本バンド界に於いては万年ドラマー不足に悩まされている訳である。

 何かに似ていないか。

 そう、野球界が常に捕手を育成する事に苦労しているのと同じような状況だと思うのだ。

Bsは「正捕手論」が長くなる程の捕手バブル

 全球団を見渡せば、まだまだ名捕手はいる。しかし、同一球団が続けて名捕手と呼ばれる存在を据え続ける事は難しいようで、捕手間の世代交代がスムーズに進む事はまず少ない。一塁手や三塁手、外野手ならコンバートも可能だろう。二遊間同士での配置転換も頻繁に聞く話である。しかし、プロ入団後に捕手に転向したという話はまず聞かない。そう、バンドのドラマーと同じなのだ。あまりに高い専門性ゆえ良い捕手が溢れる程育つ暇がないのである。

 だが、それもどこ吹く風。我々Bsに関しては常に「捕手バブル」なのだ。こっそり言うが、実は「捕手大国」なのである。ORIX Buffaloes誕生当初、的山哲也さん、日高剛さんという名捕手が同時にチームに存在した。しかもその時、既に後の正捕手・鈴木郁洋(現一軍バッテリーコーチ)も在籍していた。その後は伊藤光選手の入団、昨シーズンからの若月健矢選手の台頭と、本当に捕手には恵まれていて、Bsファンは「捕手を誰に任せるべきか」の談義になると朝まで語り尽くせるだろう。

バッテリーのノーヒットノーランを予言していたかのようなBs2012カレンダー ©MEGASTOPPER DOMI

 断っておくが、「打てる捕手」と言っている訳ではない。ここではあくまで守備面、チームの要としての捕手の話をしているのである。それに鈴木コーチ、伊藤選手は抜きん出て「イケメン」である。イケメン好きのBsファンが放っておく訳がないのである。勝手な言い草だが「イケメン捕手大国」なのである。2005年以降、ノーヒットノーランを達成した投手はわずか7人しかいない。その内の一人が西勇輝投手で、その試合でマスクを被ったのは伊藤選手である。そう、伊藤選手は「イケメンノーヒッター」なのだ。

 今後も伊藤選手vs若月選手のイケメン正捕手バトルが激化し、そこに伏見寅威選手や新入団の飯田大祐選手が割って入るという理想的な展開が続けば、しばらくは「捕手大国」も安泰だろう。

配球持論より投手の勝利への貢献を

 話は変わるが、そもそも「良い捕手とは何か」。以前、TVで里崎智也さん(元ロッテ)がそんな質問を受けていた。その時、彼は「打って試合を勝ちに持って行ける捕手が良い捕手だ」と答えていた。額面通りに受け取れば、至って簡単な話であるが、配球や守備、ミットの構え方に至るまで精通した彼が放った言葉であるから、裏の裏まで熟慮した上での結論なのだと思う。

 自分も過去に、トークショーで岸田護投手に同様の質問をした事があったのを思い出した。その時、彼は「投手はボールの握り方とか腕の振り方、一球一球ごとに気にする箇所が沢山あるんです。だからこそ投球行為に集中させてくれる捕手、一球一球に集中させてくれる捕手だと物凄く投げやすいんです」と答えてくれた。打と守で全く違う視点のようだが、両者とも「ピッチャーを楽にする」という点では共通している意見だと思う。リードや配球、バッティングにキャッチングやフィールディング、肩の強さや牽制など、捕手を評価する項目は無数に存在する。しかし、「ピッチャーを楽にする」という要素が本当は一番大切なのだろう。それでこそ「女房役」なのである。ヒーローインタビューで投手から「気持ちよく投げる事が出来ました」という言葉が出た時点で、それはもう捕手の評価なのではないだろうか。これだけ育成の難しい捕手であり、しかも成長は若手捕手に課せられた使命でもある。投手の勝利に貢献してくれた際には、もっと手放しに高評価を与えようと思う。

 えっ? 良いドラマー? それは勿論、「気持ちよく歌わせてくれるドラマー」が一番良いドラマーに決まっている。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

 

  HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

はてなブックマークに追加