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連載この鉄道がすごい

JR・相鉄直通線はどこまで便利か、平日初日の「大宮行き」に潜入してみた

相鉄ユーザーの乗りこなしがすごかった

2019/12/07

genre : ライフ, , 社会, 経済

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6カ月定期の更新が終わる頃には……

 西谷駅発車時の車内は、海老名駅発車時と同じ混み具合だ。いまのところ、この人数が現在のJR・相鉄直通線の需要だ。

 注目されている割には少ない気がするけれど、もともと相鉄線は関東大手私鉄の中では混雑率が低い。神奈川県が公開している2017年度の相鉄線の混雑率は133%。小田急は151%、東急東横線は168%だ。いままで横浜方面だけだった利用者が、西谷で2方面に分散したから、かなり空いている。ここまで、もっとも混雑した区間は大和~二俣川間だった。

JR・相鉄直通線に使われている相鉄の12000系車両 ©︎杉山秀樹/文藝春秋

 ただし、今日は「お試し」でJR直通線経由に乗る人もいるはず。やっぱり横浜経由がいいとなれば減るだろうし、便利だと認識する人が多ければ増えるかもしれない。次の定期券から切り替えようという人がいれば、6カ月定期の更新が終わる頃が本来の需要になるだろう。ちなみに相鉄では12月30日まで、JR直通線の定期券・回数券の購入者に対して、横浜経由の定期券・横浜までの回数券を手数料なしで精算してくれる。

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生産緑地の宅地化が進みそう

 西谷を発車すると線路は下り坂、トンネルに入る。JR・相鉄直通線、将来の新横浜線の始まりだ。地下区間を走り、数分後に地下駅の羽沢横浜国大駅に到着。周辺は貨物駅と住宅地。まだ田畑も多いところだ。ここで各扉から2人ほどの乗客がある。新横浜と保土ケ谷を団地経由で結ぶバス路線がこの駅に立ち寄る。

新駅として開業した羽沢横浜国大駅 ©︎杉山秀樹/文藝春秋

 また、羽沢町のほとんどの地域は市街化調整区域となっていて、農地は「生産緑地」に指定されている。2022年に固定資産税の優遇措置が終わるため、一斉に宅地化されると見られる。相鉄沿線には生産緑地が多く、これから急速に人口が増える可能性がある。JR・相鉄直通線、東急・相鉄直通線は工期が遅れたけれども、結果的に絶妙なタイミングになった。

 羽沢横浜国大駅を発車すると地上に上がり、東海道貨物線に合流し、しばらく走ると地下に潜る。次の武蔵小杉駅までの駅間は長く、18分もかかる。鶴見駅付近で顔を出し、横須賀線と並ぶ貨物用の線路を走る。合流地点は武蔵小杉駅の手前だから、新川崎駅にはプラットホームがないため停まらない。

レンガ造りの羽沢横浜国大駅 ©︎杉山秀樹/文藝春秋

 ネットでも話題になっているけれども、羽沢横浜国大~武蔵小杉の運賃は310円、しかし、その先で乗り換えて乗車距離の長い羽沢横浜国大~鶴見間は170円だ。この区間は武蔵小杉で南武線や横須賀線に乗り換えて、川崎または横浜で京浜東北線に乗り換えるルートになる。しかし、いったん鶴見駅付近を通過する。プラットホームはないけれども、それはJRの都合であって、距離としては短いから鶴見駅まで170円になる。同様の例は宇都宮線・高崎線と常磐線を乗り継ぐ場合などがある。宇都宮線・高崎線の日暮里駅にはプラットホームがないから停まれない。だけど運賃は日暮里駅乗り換えとみなして、日暮里~上野間の往復運賃は加算しない。