駅から喫煙所が姿を消して久しい。今ではまるで想像できないのだが、一昔前はどの駅にも喫煙所があって、喫煙者たちが電車待ちの時間に一服する姿が見られたのだ。もっと言えば、昭和の昔には喫煙所どころか駅のそこかしこでタバコを吸ってホームの端から線路にポイ、なんて光景も珍しくなかった。そういう時代だったのである。

 だが、今はすっかりそんなことはなくなり、少なくとも首都圏の鉄道や駅ホームから喫煙所は消えた。昭和の頃のように、電車待ちのホームで紫煙をくゆらせる人の姿を見ることはもうない。しかし、これはあくまでも“首都圏”のお話。地方に行けば、小さな駅の片隅にポツンと灰皿が設置されているような駅もまだあるらしい。では、東京から一番近い“喫煙所のある駅”はどこなのだろうか。それを見つけるべく、中央線に乗り込んで探す旅をしてみた。

「ホーム喫煙所のある駅」を探すべく中央線に乗り込んだ

高尾駅のホームには喫煙所がある?

 中央線、と言っても都会の中の駅に喫煙所があるとは思えないので、スタートは高尾駅にした。高尾登山の拠点にもなるやや観光色の強い駅だ。一部の“中央線快速電車”は高尾駅を通り越して山梨県大月駅まで走るが、ほとんどは高尾駅止まり。逆に高尾駅からは甲府や松本、さらには長野まで向かうようなロングラン列車が発車している。そういう駅ならば、意外とホームの端っこに喫煙所があるのではないか。

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さて高尾駅のホームには喫煙所があるだろうか?

 ……と思っていたが、見つかったのはホーム上に鎮座する石造りの天狗くらいなものであった。もっと牧歌的な雰囲気かと思っていたが、登山客や地元の人たちが盛んに乗り降りしている賑やかな“都会の駅”であった。駅の外に出れば、広いバスターミナルの奥の方に喫煙所が設けられていたが、それだけである。

高尾駅ホームに鎮座する石造りの天狗
山登りの客が乗り降りする高尾駅
高尾駅前、広いバスターミナルの奥の方にはひっそりと喫煙所があった