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山田 隆道
2017/03/16

【阪神】タイガースとWBCの苦い歴史

文春野球コラム ペナントレース2017

 現在、WBCがおおいに盛り上がっている。私も一人の野球ファンとして楽しんでいるのだが、その一方で虎党ならではの寂しさも感じている。なにしろ、我が阪神からは藤浪晋太郎一人しか出場していないのだ。その藤浪も潜在能力への期待はあるものの、制球難の不安は常に指摘されており、だから侍ジャパン投手陣の柱という位置付けではない。

 贅沢な話だが、私としてはやはり虎戦士が主力級の大活躍をしたうえで侍ジャパンが勝利する、そんな光景を見たいと思ってしまう。これまでのWBCはどういうわけか虎戦士との相性があまり良くなかったから、余計にそういう気持ちが強いのだ。

藤川がサヨナラヒットを打たれた第1回WBC

 WBCと虎戦士。これはもう、苦い思い出のほうが圧倒的に多い。2006年の第1回WBCには阪神から藤川球児と久保田智之が選ばれたが、その前年にリーグ優勝したことを考えると、この2名だけというのは少し寂しいものがあった。かたや前年のパ・リーグ覇者であるロッテからは、最多の8名も選ばれていたのだ。

 だから、寂しいだけでなく悔しくもあった。この差はきっと前年の日本シリーズの影響だろう。阪神がロッテに4連敗を喫し、しかもトータルスコアが「33-4」という大惨敗だったことから、ネット上で今も嘲笑される悪夢の日本シリーズ。あの結果が代表選考にも響いたのだ、そんな勝手な妄想がしばしば頭をよぎったものだ。

 とはいえ、藤川と久保田がWBCで大活躍すれば鬱憤も晴れたのだろうが、現実は不満が残る結果となった。藤川は4試合に救援登板して自責点0だったものの、2次ラウンドのアメリカ戦でアレックス・ロドリゲスにサヨナラヒットを打たれ、敗戦投手になった。

 当時の藤川といえば、のちに火の玉ストレートと称される独特のホップする速球で注目を集めだしていたころだ。私としては、WBCでそんな藤川のすごさが全国に知れ渡ることを楽しみにしていたのだが、スポーツニュースで繰り返されたのは先述のサヨナラヒットを打たれて頭を抱えるシーンばかり。ああ、今思いだしても悔しい。久保田にいたっては、そもそも登板機会が一度もなかったし。

第1回WBCに出場した藤川球児 ©文藝春秋

藤川がダルビッシュにクローザーの座を譲った第2回WBC

 そして、2009年の第2回WBC。代表選考の段階で、阪神の新井貴浩と矢野輝弘(現在は燿大)が出場を辞退し、またも虎戦士は藤川と岩田稔の2名だけとなった。ただし、前回とちがうのは侍ジャパンにおける藤川のポジションだ。このころの藤川はNPB屈指のクローザーにのぼりつめていただけに、大会前から侍ジャパンの守護神としておおいに期待されていた。全国のマスコミに取り上げられる回数も多く、なぜか私まで鼻が高くなっていた。我が虎戦士が日の丸を支えている、そんな誇らしさを感じていた。

 ところが、いざ大会が始まると、その誇らしさはトーンダウンした。覚えている方も多いと思うが、あの大会での藤川はなかなか調子が上がらず、時の首脳陣も藤川に対して次第に厳しい評価を口にするようになった。実際には1次ラウンドと2次ラウンドで計4試合にクローザーとして登板し、すべて無失点に抑えているのだが、その投球内容は自慢の火の玉ストレートで次々に空振りを奪うような、藤川らしいものではなかった。

 その結果、決勝ラウンドでは藤川に代わってダルビッシュ有が侍ジャパンのクローザーを務めることになった。決勝戦で韓国を破り、日本のWBC二連覇が決定した瞬間、マウンドで歓喜の雄叫びをあげたダルビッシュ。あのシーンを映像で見るたびに、私は今でも藤川のことを思い出してしまう。球児も悔しかっただろうが、私も悔しかった。日本の二連覇もダルビッシュの活躍も喜ばしいことだが、そこに虎党としての心残りがまったくなかったわけではない。時が経った今だから、恥と見苦しさを承知で堂々と書く。

 あの最後のマウンドには、やっぱり球児に立っていてほしかった!

鳥谷の「伝説の二盗」があった一方で、地味に悔しかった第3回WBC

 続いて、そんな寂しさと悔しさと心残りを胸に秘めながら挑んだ2013年の第3回WBCである。阪神からは能見篤史と鳥谷敬が侍ジャパンに名を連ねた。なにより印象深いのは、二次ラウンドの台湾戦だろう。侍ジャパンの栄えある先発投手に我らのノウミサンが抜擢され、1点ビハインドで迎えた九回二死の土壇場では我らの鳥谷が今も語り継がれる貴重な二盗を決めた。その後、井端弘和が同点タイムリーを放ち、延長戦に持ち込んだ末、日本が台湾に逆転勝利した試合はあまりに有名だ。

 しかし、そんな第3回WBCは肝心の侍ジャパン自体が準決勝でプエルトリコに敗れ、三連覇を逃した。さらに、そのプエルトリコ戦では先発の前田健太が5回1失点に抑えたものの、続く二番手で登板した我らのノウミサンが7回表に痛い痛い2ランホームランを浴びた。最終スコアは「3-1」。結果的に、この2失点が重くのしかかったわけだ。

 うーん。そう考えると、やっぱり第3回WBCも悔しい思い出のほうが多い。そもそも鳥谷もあの盗塁がなかったら、打撃成績が良かったわけではないし、ポジションだって本職のショートを巨人・坂本勇人に譲り、セカンドとしての出場が主だった。細かいことかもしれないが、あの当時で「ショート・坂本、セカンド・鳥谷」という首脳陣の選択は、虎党として地味に悔しかった。地味に悔しいといえば、そもそも過去のWBCで虎戦士がもっとも脚光を浴びたポイントが「盗塁」って。そらもう、あれよ。

 そんなわけだから、今回のWBCでも私はやはり藤浪に注目してしまう。過去のWBCと虎戦士の相性の悪さ。寂しさと悔しさと心残りと。そんなすべての鬱憤を爽快に晴らすような大活躍を、我らが晋ちゃんには期待したい。

 と、現時点(3月14日昼)でここまで書いてしまったのだが、本稿が掲載されるころに藤浪が悪い結果を残していたら、 あるいは出番がまったくない状態が続いていたら、 と思うと背筋がゾッとした。その場合はご容赦を。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

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