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大場 真代
2017/04/16

「大人の発達障害」のアノ人とうまく付き合う方法

互いにストレスを溜めないために知るべき傾向と対策

 いつもミスばかりする、人の話を聞かない、空気が読めない発言が多い……、あなたの周りにもこんな人、いませんか? 

 発達障害に近い傾向がある、“ちょっと人と違うな”と思う人と上手く付き合うにはどうしたらいいのか、発達障害に詳しいどんぐり発達クリニックの宮尾益知院長に話を伺いました。

子どもの頃は、うっかりさん

「あるADHD(注意欠如多動性障害)患者さんに、子どもの頃からケアレスミスが多い、いわゆる“うっかりさん”と言われていた20代の男性がいました。落ち着きはないものの、人当たりはよく、積極的でもあるので、クラスの人からは好かれていました。

 しかし大学に入った頃からアルバイト先でミスが続いて叱責を何度も受け、結局クビになってしまった、大学のレポート提出を忘れてしまって単位を落としたなどのトラブルが続くようになり、疲れがひどくて朝起きられない、憂うつな気分が抜けないなど身体の不調が出るようになりました。

 内科へ行っても特に問題ないと言われ、精神科に行ったものの『うつ病』と呼ばれ、抗うつ薬を飲んで治療を続けたものの快復せず、巡り巡って当院を受診しました。そこでADHDだということがわかり、治療を続けたところ、予定を組んだり、時間を守ることができるようになりました」

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大人の発達障害 2つのパターン

「発達障害の中には、知的に問題がある人や、子どもの頃に診断を受けている人もいますが、最近特に注目されているのが、知的には問題がなく、現在診断を受けていない、いわゆる『大人の発達障害』と呼ばれるものです。

 大人の発達障害の中には、アスペルガー症候群とADHDの2つがあります。

 アスペルガー症候群は、こだわりの強さやコミュニケーション面の困難さ、感覚過敏や鈍麻(感覚が鈍くなること)などの特性があり、視覚的で、目で見て理解するほうが強く、ゼロかイチかの極端な考え方をする傾向にあります。

 一方、ADHDは『不注意』『多動性』『衝動性』の特性があり、落ち着きがなく、いい加減で、思い立つとすぐに何かをやってしまう傾向があります。どちらかというと、言葉や文章に強い人が多いです。

 どちらも人間関係のトラブルを抱えたり、仕事でミスを多発したりしますが、その違いは次のようにあらわれます」

アスペルガーとADHDの違い

【対人関係】
アスペルガー:他人の気持ちを汲み取れない
ADHD:他人の気持ちは汲み取れるが、自分の思いが先走ってしまう。(自己中)

【整理整頓】
アスペルガー:気に入ったものしか持たない、使うと意識からなくなりカメラアイとして覚えればどこに何があるかわかる
ADHD:衝動的に買ってしまう、忘れ物が多く、整理整頓は苦手。片付けられない

【集中力】
アスペルガー:同じパターンで行動することで安心感を得る。好きなことや場所と時間、段取りが身につけば高い集中力を発揮する
ADHD:本当に好きなことに対しては過集中するが、本当にしなければならないことは後回し、周囲が雑然としていると集中力を持続できない

【仕事】
アスペルガー:作業の一部分にこだわり、全体としてみることができない。優先順位をつけることができない。目的をやり遂げるまでの手順を考えることが苦手。目標を積み重ねて完遂させる。
ADHD:計画的なタスク管理や同じ作業を続けるのが苦手、仕事の過程を意味づけして説明する。

【感覚異常】
アスペルガー:五感のうちどれかが過剰、あるいは鈍麻(感覚が鈍いこと)がある
ADHD:感覚の問題があることは少ない。

 アスペルガーとADHDは一見すると見分けがつきにくいものですが、このように違いが表れます。わかりやすいのは、向いている仕事です。

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アスペルガーに向いている仕事

マーケティングデザイナー
ウェブデザイン
リサーチャー
税理士
調整作業
工場の流れ作業
セキュリティ
芸術職

ADHDに向いている仕事

本人に興味のある仕事
IT
マスコミ
小規模の貿易業
営業

「アスペルガーの人は、同じことを繰り返しやることが向いており、一方でADHDの人はITなど人と対することなく自分のペースでできるような仕事に向いています。

 ADHDの向いている職業に挙げられている『小規模の貿易業』というのは、大規模の貿易会社だと決まった物しか扱いませんが、小規模なら売れそうなおもしろそうなものを探しに行くわけですから、興味関心が移りやすいほうが、思いがけず成功することがあります。ADHDの人は自分の興味がいつも頭のどこかにあり、感性が独特で『目の付け所がシャープ』というわけです。

 また、営業職に向いているとされるのはADHDですが、アスペルガーの人が向いているものもあります。

 例えば同じ車の営業でも、いわゆるブランドカーといわれている外国車はアスペルガーの人ほうが向いているようです。こだわりが強く、『この人の言うことは信頼できる』と思わせてしまうのです。しかも、着ているものも趣味のよい一流のことが多い。実際、私の患者さんの父親でアスペルガーの男性で、外国車メーカーの営業トップになったという方がいます」

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