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大山 くまお
2017/04/01

森友学園問題で注目された「忖度」 本来の意味は?

今週の名言、珍言、問題発言

安倍晋三 首相
「渡していないのは証明しようがない。いわば悪魔の証明だ。籠池氏らが出してきたものが本物だったか、しっかり検証されるべきだ」

共同通信 3月28日

 名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。国有地の格安払い下げ問題に端を発し、安倍昭恵首相夫人の関与、籠池泰典理事長の証人喚問など、国民的関心事となった森友学園問題。今週は籠池氏が公の場所に登場しなかったこともあって、ややトーンダウンした格好。

 森友学園問題について野党からの追及を受け続けてきた安倍晋三首相だが、28日の参院決算委員会で民進党の斎藤嘉隆議員から籠池氏が証言した昭恵夫人からの寄付について否定する根拠をただされると、「民進党の辻元清美氏にも同じことが起こっている」と反論してみせた。

「悪魔の証明」がお好き ©三宅史郎/文藝春秋

 これは28日、産経新聞が報じた辻元氏に関する「3つの疑惑」について語ったもの。正直なところ、なぜここで辻元氏が引き合いに出されるのかがよくわからないのだが、ネットは民進党と辻元氏への批判で非常に盛り上がった。辻元氏の疑惑を報じた産経新聞政治部長の石橋文登氏も「蓮舫氏の『二重国籍』疑惑も含めて今後も政界の疑惑は徹底的に追及していきたい」(産経新聞 3月31日)と意気上がる。

 また、ここで安倍首相が切り札にしているのが「悪魔の証明」という言葉だ。自分が昭恵夫人の疑惑を否定する根拠を示すなら、辻元氏も自身の疑惑を否定する根拠を示してみなさいよ、ということなのだろう。安倍首相は「悪魔の証明」という言葉が好きなようで、3月1日の参院予算委員会で共産党の小池晃氏からの質問に対しても「悪魔の証明」と切り返している。

 安倍首相は「悪魔の証明」で逃げ続けることができるのか、それとも新たな展開が待っているのか。まだまだこの問題からは目が離せない。

飯間浩明 日本語学者
「『忖度』という言葉が汚れてしまった気もしますね」

BuzzFeed Japan 3月29日

 森友学園問題で一躍注目を集めたのが、「忖度(そんたく)」という言葉だ。籠池氏は会見で、土地取引のスピードが上がったのは「忖度」があったからだと語っている。昭恵夫人の秘書に問い合わせたのをきっかけに、財務省の官僚たちが夫人の意向を「忖度」したという主張だ。また、松井一郎大阪府知事は日本維新の会の党大会で「忖度には、悪い忖度といい忖度がある」(THE PAGE 3月25日)と発言した。

 辞書編纂者で日本語学者の飯間浩明氏は「もともと忖度に良いも悪いもなかった。ただ人の心を推測するってことですから」と説明するが、一方、「『忖度』という言葉が汚れてしまった気もしますね。これから『もっと人の心を忖度しなさいよ』と言うと、悪いイメージになるかもしれない」とも述べている。今後、自身が編纂する三省堂国語辞典に「役人が政治家の考えを忖度する」という例文を付け加えることも検討するという。

文科省担当者 
「パン屋がダメというわけではなく、教科書全体で指導要領にある『我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ』という点が足りないため」

朝日新聞 3月24日

「パン屋」は「和菓子屋」に、「アスレチック」は「和楽器店」に。多くの人が唖然とした小学生向け道徳教科書の検定結果。いずれも文科省が道徳教科書の検定で「学習指導要領の示す内容に照らして、扱いが不適切」だと指摘し、出版社が改めたものだ。

 これまで道徳では教科書ではなく副読本が用いられてきたが、2018年度からは小学校で教科書が使用されることになる。そのための教科書検定の結果が「和菓子屋」や「和楽器店」への変更だった。文科省が直接変更を指示したわけではないが、教科書作りにより積極的に関与しようとする姿勢を示したものだろう。

 ところで、文芸評論家の斎藤美奈子氏はパンと和菓子のルーツについて「どちらも郷土というより国際交流の賜(たまもの)で、両者の間に差などない」(東京新聞 3月29日)と指摘している。これを受けて池上彰氏は「郷土のことをよく知らないのは文科省なのかも」(朝日新聞 3月31日)とバッサリ。

稀勢の里
「今までの相撲人生15年間とは全く違う場所。見えない力を感じた15日間でした。あきらめないで、最後まで力を出して良かった」

日刊スポーツ 3月26日

左が高安 ©雑誌協会代表

 大相撲の春場所千秋楽で奇跡が起こった。13日目に左肩付近を負傷、窮地に追い込まれた新横綱稀勢の里が本割、優勝決定戦と優勝争いのライバル・大関照ノ富士に連勝し、見事な逆転優勝を飾った。国歌斉唱の間、男泣きに泣く新横綱の姿に胸が熱くなった人も多いだろう。

 長く「ここ一番で弱い」と言われ続けていた稀勢の里だが、もはやそうは言われまい。貴乃花親方は「これまで稀勢の里自身が築いた相撲道を、神様が見守ってくださった気がする」(日刊スポーツ 3月30日)とコメントした。優勝が決まった瞬間、弟弟子の関脇高安が支度部屋で「報われて良かった」と号泣したというエピソード(日刊スポーツ 3月26日)も、新横綱の人柄をよく伝えている。

星野智幸 小説家
「相撲の内容と、出自はまったく関係ない。結びつけている時点で問題なのに、さらに出身国へ帰れというのは暴言のレベルを超えている」

BuzzFeed Japan 3月30日

 大相撲で気になる話題も。26日、スポーツ報知が「照ノ富士、変化で王手も大ブーイング!『モンゴル帰れ』」という見出しの記事を配信した。変化で琴奨菊を下したモンゴル出身の照ノ富士に対して、観客から「モンゴルに帰れ」という野次が飛んだことを記事にしたものだ。

 好角家の小説家、星野智幸氏はこの「モンゴルに帰れ」という発言と、それをそのまま見出しにした新聞社について「これは差別発言であり、ヘイトスピーチ」と指摘。「長年、大相撲を見てきましたが、こんな発言は記憶にない」とコメントした。モンゴル出身の横綱日馬富士は、その日の場内の雰囲気を「相撲を取るどころじゃなかった。集中してるけど耳に入ってしまう。次の一番に集中してる人のことも考えてほしい。大けがにもつながるから」と振り返っている(日刊スポーツ 3月25日)。

 なお、日本相撲協会は差別発言に対する注意喚起を行う予定はないとのこと。スポーツ報知は自社のウェブサイトで当該の記事についてのおわびを発表した。

山田千賀子 てるみくらぶ代表取締役社長
「自力で対処してもらうしかない」

THE PAGE 3月27日

破産開始決定を受け、記者会見する格安旅行会社「てるみくらぶ」の山田千賀子社長  ©時事通信社

 海外旅行の格安ツアーを手がける旅行会社「てるみくらぶ」が経営破綻。同社を介して渡航中だった旅行者は2500人にも上るとされており、「飛行機の航空券が発券できない」「予約したはずのホテルに泊まれない」「ホテルの宿泊料を追加で請求された」などのトラブルが相次いだ。

 山田千賀子社長は記者会見で今後ツアーを予定している客に対して、安全確保の観点から「もう本当に行かないでくれ」と懇願。一方、すでに海外へ出国した人について同社は「自力で対処してもらうしかない」としている。どっちもお金をもらっておいてその言い草はないだろう、と思わざるを得ない。

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