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藤原 敬之
2017/04/24

「トランプの戦争」で懸念される金融市場の悪夢

もはや「対岸の火事」ではすまない

 トランプ政権がシリアに対し米国として初めて軍事行動を取った。

「軍事行動に関しては、トランプ政権は機能している」

 政権発足後、移民制限や医療保険制度改革法(オバマケア)改廃などの目玉公約実現の事実上の失敗が続く中、こうした見方は妥当なところだろう。「機能しない政権」の認識が広がり、“トランプラリー”の調整が株式市場で始まった中で、この軍事アクションの意義は大きい。「軍事オプション行使」という最も重大かつ難しい意思決定を、現米国政権は軽々と行った。内外に大きなインパクトを与えたのは事実だ。

©getty

“来たるべき新重商主義時代”

 オバマ前政権では大統領がノーベル平和賞を受賞してしまい、米国が持つ世界最強の軍事力を封印したことで、ロシア・中国の力の台頭を許した。その意味でこれまでの米国の失政を正し、軍事面での米国の優位性を示した意義は大きい。中国とロシアに“米国の恐さ”を思い出させたことは「これからの世界」を考える上で重要だからだ。

 これからの世界……。

 アダム・スミスとデヴィッド・リカードが葬られ、200年続いた産業資本主義(自由貿易を基本としグローバリゼーションを推進)から重商主義(保護貿易を基本とし植民地政策を推進)へと逆行する世界だ。この世界をイメージする中、世界最強国が軍事行動を取る意義は極めて大きい。さらには、その国の最高権力者が“独特の感覚”で軍事力をやすやすと使う人物であることに注目しなければならない。
“来たるべき新重商主義時代”を創る存在として、出るべくして出てきた大統領と言えるかもしれないのだ。

 複雑な問題の入り組んだ今のシリアへの軍事力行使は本来かなり難しい判断を要するはずだ。それを僅かな時間で決定したこと。しかも、中国首脳の米国訪問中を狙って……。

 行動ほどその人物を明らかにするものはない。そこにあるのは“ビジネス感覚”での一石二鳥三鳥という目論見だ。

 シリアへの攻撃で宿敵中国が対米姿勢をここから慎重なものにするのは必至で、習近平は思考不能に陥ったはずだ。「米国は恐い。トランプは何をするか分からない」。そして中国が後ろ盾となる北朝鮮にも自制を促す強烈な一撃となった。ただ、ロシアとの関係改善を目すとされていたトランプが真逆の行動に出たのは従来の政治的流れからは分からない。“アメリカ第一主義”を掲げ他国の紛争への介入は避けるとした公約に逆行するのも分からない。そこは別の見方をしなくてはいけない。トランプ大統領の“独特の感覚”から判断するべきなのだ。すなわち“ビジネスマンとしての感覚”から、である。

シリア攻撃に抗議する人々 ©getty