『稲川淳二の怪談グランプリ』で優勝経験もある、オカルトコレクターの田中俊行氏。田中氏が同グランプリで語った怪談「あべこべ」は、大きな衝撃とともに今も“名作”として語り継がれています。その驚きの実話を、田中氏本人が書き下ろします。

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 これは私が、友人のK君から聞いた話です――。 

 今から10年ほど前のこと。釣りが趣味のK君は、とある釣り仲間から山陰の日本海側にある“釣りスポット”を教えてもらいました。そこで早速、当時付き合っていた彼女と一緒に、車で夜釣りに出掛けたそうです。

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 ただ、初めていく釣り場ということもあり、道に迷ってしまい、彼らがようやく目的地に着いたのは午前0時。駐車場などはなく、海岸沿いに車を停めると、あたりは真っ暗だったそうです。他に釣り人もいないし、まわりには民家などもまったくない、そんなさびしい海岸だったと、K君は言います。

自販機でジュースを買ってくると……

 そんななか、早速釣りを始めたK君でしたが、全くアタリも無いまま、1時間、2時間……と、ただ時だけが過ぎていきました。1人なら何時間粘っても平気なんですが、今日は彼女と一緒に来ている。その彼女は隣でじっとしていて、おそらく手持ち無沙汰にしている。そこで彼は気を遣って、「飲み物でも買ってくるわ」と言い、少し離れた自販機までジュースを買いにいきました。

 そして飲み物を手に戻ってくると、彼女は見知らぬ人たちに囲まれていました。それはどうやら4人組で、とはいえ彼女とは楽しそうに話をしているのです。

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 不審に思いながら近づいていくと、K君に気づいた彼女が「地元の方ですって」と紹介してくれました。しかも、その4人は家族なのだと。

 確かに、お父さん、お母さん、中学生くらいの女の子、そして小学1年生くらいの男の子の4人組で、家族であるのは本当のようです。