多くの人が「住みたくない」と思う事故物件。しかし、その一方で、運悪く自分の所有する土地やマンションが、ある日突然事故物件になってしまったオーナーも大勢います。ここまで、そうしたオーナーたちが様々な工夫をこらして、「人が住まない」という形で事故物件を“活用”している例を見てきました。

 今回は、「人が住む」パターンをご紹介しましょう。家賃や売値を下げる以外に、事故物件のオーナーがとりうる選択肢とは、一体どのようなものなのでしょうか(全2回の2回目/前編より続く

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実は曖昧な「告知義務」の基準

 前回も不動産業における「告知義務」についてご説明しました。これがあることによって、たとえば私たちが部屋を借りる際、前の入居者がそこで自殺していたり、あるいは直前に殺人事件が起きていたりしたら、業者からその旨が伝えられることになっています。

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 しかし、その基準は実は曖昧で、これまでの裁判例を見てもケースバイケースです。たとえば、「何年前の出来事まで告知しなければいけないのか」という質問に対し、明確に「◯年前まで」と答えるのは難しいのです。

 ただ、一つだけはっきりしているのは、集合住宅・一軒家を問わず、事件があった当該物件だけが告知義務の対象である、ということ。そのため、自分が引っ越した先で、後日「真上の部屋で最近自殺した人がいる」ということがわかっても、損害賠償訴訟で勝つことは基本的にできないのです。

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交際相手の男に殺された女性

 そうしたケースで、非常に参考になる物件が札幌にあります。札幌市内を南北に貫く豊平川からほど近いアパートです。その一室で数年前に、殺人事件が起きました。入居者の女性が交際相手の男に首を絞められて殺害されたのです。