犯人の男が住んでいたのは……
この事件が特殊だったのは、犯人の男が事件当時、女性のすぐ隣の部屋に住んでいた、という点でした。隣同士に住む男女が何かのきっかけで付き合い始めたのか、既に付き合っていた男女が“半同居”のような形で住み始めたのかはわかりませんが、二人はそれぞれの隣の部屋に住みながら、交際をしていたのです。
事件後、女性は亡くなり、男は刑務所に入ったため、どちらの家も空き部屋になりました。ただ、こうしたケースの場合、事故物件として「告知義務」が発生するのは、殺人事件が起きた女性の部屋だけです。
一方、いくら「犯人が住んでいた部屋」で、かつ「隣の部屋が殺人事件の現場」だとしても、“男が住んでいた部屋”に引っ越そうとしている人に、「実は、ここでこんな事件がありまして……」と伝える義務は、業者側にはありません。
殺人事件が起きた杉並区の一軒家
こうした、「当該物件だけ」というルールを、うまく“利用”しているのではないか、というケースも最近よく見かけます。たとえば東京杉並区のある物件。10年ほど前、そこに建っていた一軒家で殺人事件が起きました。
事件後、建物は取り壊され、その場所にはコインパーキングができました。前回ご紹介したように、事故物件をその後コインパーキングにするのは、告知義務を回避する「あるある」の一つです。しかし、実際の収入や税金などを考えると、コインパーキングというのは、土地の活用法としてあまり儲かるやり方ではありません。