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“事故物件跡地”に建った約30軒の戸建て
その極端な例が、東京の板橋区にあります。そこでも10年ほど前、悲惨な殺人事件がありました。殺されたのは資産家の夫婦で、そのまさに“豪邸”が殺害現場となりました。相続する子供などがいなかったのか、事件後、その土地は一旦国のものとなり、公売という形で払い下げられました。
そして、その土地を購入した不動産業者は、敷地を細かく分割し、なんと30軒ほどの戸建てを新築しました。こうなると、かつての夫婦の殺害現場を含む1軒以外は、事故物件ではなくなる、と考えることができます。さらに言えば、その殺害現場を道路やちょっとした公園などの公共スペースにしてしまえば、業者としては約30軒すべてが事故物件ではない、と主張できてしまうのです。
そうした“からくり”が、法的にどこまで通用するのかは、実際に裁判になってみなければわかりません。ただ、ここで重要なのは、業者側が「これで問題ないはずなんだ」と思い込むと、それが業界全体の潮流になっていき、やがては“慣習”になってしまう、ということなのです。
ちなみにその“元豪邸”では、新たな戸建てを建設中、工事関係者が一人、資材の下敷きになり亡くなっています。もし、上記のような方法で告知義務を回避できていたとしても、残念ながらその内の1軒は間違いなく、正真正銘の「事故物件」になってしまったのです。