人生100年時代と言われる現代だが、今の日本は経済力が大きく上向くことは期待できそうもない。年金制度は崩壊し、会社も社員の老後の保障どころか、今現在の給料の引き上げにも慎重だ。国や会社を頼れないなかで、どのような心持ちで働けばいいのか。

 ここでは、偉人たちの「生き延び方」から、今の現代を生きるヒントを見出した作家・栗下直也氏の著書『偉人の生き延び方 副業、転職、財テク、おねだり』(左右社)より一部を抜粋。“伝説のプロレスラー”力道山のビジネス術を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

伝説のプロレスラー・力道山 ©文藝春秋

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「R」のロゴが目立つ、赤坂のレトロな高級マンション

 港区赤坂と聞くとセレブでオシャレなイメージを抱くかもしれないが、大通りを一本外れると古い民家や商店も珍しくない。大使館が点在する赤坂7丁目も例外ではなく、稲荷坂をのぼるとアルファベットの「R」の文字がいくつも配されたレトロな建物が目に入る。

 インターネットの物件情報によると、東京オリンピックの前年の昭和38年(1963年)に建てられている。当時としてはかなり高級な建物だっただろう。

 8階建ての全46戸で、この原稿を書いている時には2階の1室(2LDKの68.24平方メートル)が売りに出ていたが、6499万円。赤坂にしては安いが、築60年超であることを考えるとなかなか手は出ない。いずれにせよ庶民にとっては高嶺の花だ。

 この建物に「R」のロゴが目立つのはマンション名の頭文字だ。赤坂リキマンション。勘の良い人はわかったかもしれないが、プロレスラーの力道山が企画開発した建物だ。リキマンションの隣にはかつてリキ・アパートメントという集合住宅もあった。ここの8階に力道山は居を構えていた。

力道山の自宅 ©文藝春秋

 半世紀以上前だが、そこには専用エレベータやホームバー、パーティー用の大広間、横幅2メートルの熱帯魚用の水槽、庭のプールなどが備えられていた。力道山といっても今では相撲出身のレスラー、空手チョップの人、アントニオ猪木の師匠くらいのイメージかもしれないが、いかに時代の寵児だったかがわかるだろう。