元タレントの中居正広と女性とのトラブルを巡るフジテレビの一連の問題で、同社と親会社のフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会が3月31日、調査報告書を公表した。報告書は「女性が中居氏による性暴力の被害を受けた」「重大な人権侵害が発生した」と認定し、性暴力は「業務の延長線上」だと認められるとも指摘。
さらに、経営陣の対応については、「フジテレビの対応は経営判断の体をなしていない」「思慮の浅い意思決定と被害者に寄り添わない対応」などとした。
「週刊文春」は、フジテレビが事件発覚から1年5カ月にわたって、調査すらせず、中居の冠番組を延命させた背景について報じている。判断の裏側に隠されていた、大物タレントへの忖度とフジの隠蔽体質とは、どのようなものだったのか。当時の記事を全文公開する。
(初出:「週刊文春」2025年2月27日号。年齢、肩書は当時のまま)
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「こんなしんどい調査だとは思わなかった。俺たちはもう終わりだ」
第三者委員会の弁護士による“取り調べ”を終えたフジテレビ幹部は、こんな感想を漏らしたという。
元SMAPの中居正広(52)と、芸能関係者のX子さんを巡る性的トラブル。フジが設置した第三者委員会は、目下、急ピッチで調査を進めている。
フジ編成幹部A氏による女性アナ接待の常習性に着目
「第三者委員会は、フジ編成幹部A氏による女性アナ接待の常習性に着目しています。特に問題視しているのは『ハイアット飲み』。2021年12月、A氏とその部下は女性アナを数人誘い、グランドハイアット東京のスイートルームで中居さん、男性タレントと部屋飲みを開催した。また、同時期、X子さんと2人の女性アナが同じスイートルームに招かれ、男性タレントを交えて会食している。A氏も会の開催自体は認めています」(フジ社員)
ベッドルームが併設されたホテルの一室における会食自体、異常なことだが、第三者委員会の聴取に対し、A氏の部下は「俺は悪くないと思っています」と答えているという。
トラブルを把握していたにもかかわらず、適切な調査をしなかった
「A氏自身も『悪気はなかった』と回答。『中居さんが彼女のことを好きだと思ったので、付き合えばいいのになぁと思っていた』と話している」(同前)
さらに重要なのは、X子さんの訴えを握り潰したフジの組織としての問題点だ。
中居が司会を務めるバラエティ番組「だれかtoなかい」の終了をフジが決定し、中居に告知したのは昨年11月のこと。フジは事件直後の2023年6月にトラブルを把握していたにもかかわらず、中居からの聞き取りなど適切な調査をせず、約1年5カ月にわたり打ち切りの決断をしなかったのだ。