日枝氏が女性アナと密着し……

 当時会長だった日枝氏は20階の「代表部屋」を出ると、社長ら大幹部を引き連れ、階下に降りていく。

「日枝氏を先頭にした大名行列で各局を回り、その権威を見せつけるかのように幹部らと盃を交わしていくのです」(別のフジ幹部)

 その間、15階にあるアナウンス室には待機命令が出ていたという。日枝氏がフロアに“降臨”すると、当時常務だった大多亮氏が声を張り上げる。

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「日枝さん、来ましたぁ! もっと盛り上げてぇ!」

 フジ中堅社員の証言。

「フロアには寿司やお酒が並べられ、日枝氏が登場すると、アナウンサーは乾杯をさせられる。時刻は午後1時頃。乾杯の後は、女性アナと日枝氏の写真撮影が恒例でした」

年末恒例「大名行列」の1コマ

 そこで異様な光景が複数の社員に目撃されている。

「日枝氏は、2人の女性アナと密着し、頬を擦り合わせて悦に入っていました。このシーンを初めて見たときは『これがフジの文化か』と衝撃を受けた」(同前)

 こうした狂乱の大名行列は、日枝氏が会長から取締役相談役に退く2017年頃まで続いた。それ以降も日枝氏の権力は衰えていない。その力の源泉は、人事権という伝家の宝刀だ。

日枝氏の“強権人事”を物語る出来事

 強権的な人事采配について、幹部の間で語り草になっている出来事がある。

 2018年1月22日、東京都内で大雪警報が発表され、23センチの歴史的な降雪量を記録した。幹部らは、それぞれ送迎車で移動したが、首都高速で大渋滞に巻き込まれた。

「当時、専務だった金光修氏が車両部と連絡を取り、日枝氏が同じトンネル内で渋滞に巻き込まれているという情報を入手。彼は日枝氏の送迎車に辿り着くと、トンネル内の非常階段に日枝氏を誘導し、素早くタクシーを拾って救出したのです」(フジ元幹部)

 異例の人事が行われたのは、その翌年だった。

「金光氏がフジHDの社長に大抜擢されたのです。彼は西武百貨店からの転職組であり、異例の人事。他の役員からは恨み節が噴出。この出来事が契機となり、幹部らは日枝氏への傾倒を一層強めていった」(同前)

フジ・メディア・ホールディングス取締役社長の金光修氏 ©時事通信社

 こうした日枝氏の権力は、全国にある系列局にまで浸透している。フジ系列の地方局幹部が言及する。

「現在、日枝氏は少なくとも系列の地方局6社の取締役を兼務。年数回の地方視察では、地方局の会長や社長が全力でおもてなしを行います。その光景は『まるで将軍様と地方の大名のようだ』と揶揄されている」