この4月から、東京都では新築住宅等への太陽光発電装置の設置、断熱・省エネ性能の確保等が義務づけられる。2030年までに温室効果ガスを50%削減する「カーボンハーフ」実現に向けての取り組みだ。
CO2排出量削減に貢献しながら電気代を節約することができ、さらに災害時の備えとしても頼りになる太陽光発電。「そろそろわが家にも」と考えている方も多いはず。
そこでいま注目を集めているのが「HESTAソーラー」だ。従来のソーラーパネルのイメージをくつがえす画期的な商品について、販売を手掛ける株式会社HESTA大倉・鬼塚友章社長に聞いた。
重さはガラスパネルの4分の1。厚さ3ミリで、車庫の屋根にもつけられる
——いま話題の「HESTAソーラー」について、どういう商品なのか、ご説明いただけますか。
鬼塚 “曲がる! 軽い! 薄い!”が「HESTAソーラー」のキャッチフレーズです。電力を生成する部分には薄膜シリコン太陽光パネルを使用していますので、従来のガラス製太陽光パネルの厚みが約35ミリなのに対し、「HESTAソーラー」は約3ミリ。さらに、パネルの基礎になる部分には、柔軟な素材であるポリマーを使用していますので、屋根の形状にあわせて曲げて設置することができるんです。

——半円形の車庫の屋根などにも対応できるわけですね。それだけ薄くなったのなら、重さも軽減されるでしょうね。
鬼塚 従来の太陽光パネルは1平方メートルあたり約11~17キロの荷重がかかります。30坪の戸建て住宅で100平方メートル設置した場合、屋根には軽自動車2台分くらいの重量がかかるわけです。それに対し、「HESTAソーラー」は1平方メートルあたり約3.3キロ。従来のガラス製品の4分の1程度です。
——確かに古い木造家屋だと、屋根に重いものをのせるのは不安ですよね。
鬼塚 昨年の能登半島地震でもそういう事例がありましたが、屋根の総重量が重くなると、地震の際、建物の揺れが大きくなり、耐震性にマイナスの影響を及ぼします。さらに、災害の際、避難所として使用される学校の体育館のような建物は、もともと屋根の上に重いものをのせるという前提で建てられたものではありません。そういう施設でも軽量・薄型の「HESTAソーラー」なら取り付けられるわけです。
避難してこられた方たちが少しでも快適に過ごすために暖房や冷房は不可欠ですし、情報の発信・伝達のためにはスマホの充電が必要です。電力の供給がストップした場合でも、「HESTAソーラー」と蓄電池があれば長時間電気が使えますから、防災拠点になるわけです。一般のご家庭にもぜひ設置していただきたいということで、家族の人数やお住いの設備に合わせた容量の蓄電池が選べる「防災安心パック」をご用意しています。

東京都では新築住宅への設置が義務化! 約200万円の補助金も
——気になるのは設置費用の面です。蓄電池も入れると、かなり高くなるのでは?
鬼塚 CO2排出量削減にむけて、各自治体では太陽光発電に補助金が用意されています。特に東京都は全国の自治体を引っ張っていこうということで、手厚い補助金が用意されています。モデルケースですが、既築の住宅に太陽光パネルを10枚つけて4.4kW、これに10kWの蓄電池をつけると全体で350万円くらいかかります。これに対し、東京都からは約200万円の補助金が出ます。ですから初期費用は100万から150万円ということになります。それでも、二の足を踏まれる方もいらっしゃるでしょうから、グリーンローンのような形で利率の安い「再エネローン」を組んでもらえないか、いま金融機関と話をしているところです。
※グリーンローン:企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクト(地球温暖化など環境問題の解決に取り組む事業)に要する資金を調達するために用いる融資
——太陽光発電を設置するなら補助金が潤沢に用意されている、今が狙い目ということですね。御社は創業当時から太陽光発電に取り組んでおられたのですか?
鬼塚 弊社は1962年に大阪で創業されたのですが、最初は地域のデベロッパーとして住宅団地、ニュータウンの開発からスタートしました。これまでに手掛けたニュータウン開発の総区画は4万区画以上。戸建て住宅も6万3000区画。マンションは510棟、2万室以上を供給させていただいております。安心、安全で快適な居住空間を創造し、いろいろな方にお届けする。それが創業の精神です。

——「安心・安全・快適な生活を届ける」という創業理念の延長線上に、太陽光発電があったわけですね。
鬼塚 1990年代後半から2000年代初頭にかけて太陽光エネルギーのブームがありました。弊社もいろいろな住宅を提供していましたので、太陽光発電を取り付けたいという依頼が寄せられました。
ただ、従来のガラス製パネルでは耐荷重の問題や柔軟性の問題で取り付けられないケースが多々ありました。何かもう少し工夫できないのだろうかと模索していたところ、海外製ではありますが、この「HESTAソーラー」に出会ったわけです。薄くて軽いので、建物の耐震構造に影響を与えることもなく、構造用ボンドで取り付けられるので、壁にも貼り付けることができます。いまあるパネルの上に貼ることもできますし、車庫の屋根にも取り付けることができるんです。
太陽光発電は技術革新がどんどん進んでいます。フィルムタイプのぺロブスカイト太陽電池も進化していますが、耐久性や発電効率、コスト面から一般に普及するにはまだまだ時間がかかりそうです。したがって、現状では「HESTAソーラー」がベストな選択だと考え、2024年から発売を開始しました。設置工事をしていると、近隣のお宅からも声がかかるくらい、大きな反響を頂いています。

ソーラーパネルで街中を発電所に。地球規模のCO₂削減にも貢献
——今回実際の商品を拝見して驚いたのですが、パネルの反射が少ないですね。
鬼塚 従来の太陽光パネルは重量や柔軟性だけでなく、反射による“光害(ひかりがい)”が問題だったんです。近隣トラブルを避けるために、設置場所にも制限がありました。その点、「HESTAソーラー」は表面をマット仕上げにすることで、従来のガラスモジュールでは10~20%だった可視反射率を、6.3%にまで減少させたんです。近隣に配慮した製品というわけです。
——建物が密集している都市部にはうってつけというわけですね。
鬼塚 再生エネルギーには風力や地熱など色々ありますが、都市の再エネといえばやはり太陽光になるわけです。すべての建物の屋根と壁に「HESTAソーラー」を取り付けて、街中に発電所をつくる。それは夢物語ではありません。気候変動は加速度的に進んでいます。脱炭素の取り組みはもはや待ったなしの状況です。それは地球規模の問題ですが、わたしたち一人ひとりが身近なところからCO₂削減に取り組むことで、やがて大きなうねりになっていくはずです。弊社も企業として、「HESTAソーラー」で脱炭素に貢献していきたいと思っています。


