起業と同時に新しい市場やビジネスモデルを生み出そうとするスタートアップ業界で、女性起業家の多くがセクハラ被害を受けているという。
自身もセクハラを受けた経験があり、被害者のための団体「スタートアップユニオン」を立ち上げた松阪美穂氏に、セクハラに苦しむ中でのレイプ被害、深刻な二次被害、いまだに続くフラッシュバックなどについて、話を聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く)
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「ビジネスの相談に乗ってもらっていた」人から性被害に遭った
ーー2019年に多くのセクハラ被害を受けただけではなく、2021年にはレイプ被害にも遭ったそうですね。
松阪美穂(以下、松阪) 立て続けにセクハラされたことで体調を崩してしまって、スタートアップから完全に離れていて。それでも「もう1回頑張ってみよう」と思って。まだ苦しかったけど、動き出したんです。
ベンチャーキャピタルや投資家を回ったことでセクハラを受けたので、その方法は取らないようにしようと。それで、日本政策金融公庫から融資を受けることにしたんです。その場合でも事業計画書を書くんですけど、その書き方をアドバイスしてくれると言ってくれた人がいたんです。
ーーその人から被害を?
松阪 そうです。経験者からアドバイスをもらったほうが融資金額が高くなることや、そのときすでに私が業界から孤立していたこともあり、その人にビジネスの応援をしてもらえるなら良い話かなと思いました。
それにその人は、以前から「女性起業家を応援しているんだ」と言っていて。女性起業家からも実際にそういった話を聞いたことがあったので「手伝ってくださるのであれば、お願いします」と。
その後、昼間にカフェで何回か会って、コーヒーだけ飲んでビジネスの相談に乗ってもらっていました。「この人は大丈夫な人だ」と安心していた頃にアポを取って会ったら、レイプされたんです。
ーーどこかへ連れて行かれて被害に。
松阪 その人のオフィスだと言うので行ったら、別邸みたいなところだったんです。住居兼オフィスといった感じで入った瞬間に「仕事をする場所じゃないな」っていうのがわかるんですね。
ソファが、オフィスに置くようなものではなく、ほんとにくつろぐようなソファで。完全に、そういう目的だったんだなって。これは後で知ったのですが、某ジャーナリストも指摘しているように意外と“あるある”なケースなんです。
被害に遭ったあとは、もう自分自身が壊れてしまって。我を忘れて大泣きしながら逃げて、数時間悲鳴のように泣き続けたことは覚えています。レイプのショックだけでなく、今までのセクハラ被害や夢を失った悲しさなどが全て重なって、感情が爆発してしまいました。