「記憶がなくなるくらい辛い時期でした」トラウマでうつ病になり、貯金もゼロに…
ーー具体的に言うと。
松阪 私の場合もそうですけど、セクハラの被害者が周りを敵に回す形になってしまう。加害者に同調する人が多いんです。被害者なのに、敵を作りたくないのに、平和に生きたいのに、敵対関係が生まれちゃうんですよ。
被害者のことを「嘘をついている」「あいつ、ヤバいぞ」とみんなで潰そうとしたり。そうした二次被害は加害する側の数が圧倒的に多くなるので、ひとつひとつ対応できないんですね。民事で戦うにしても数が多いから、全員に内容証明を送ったりするのは難しいし。
私は二次被害もひどかったので、ほんとになにもできませんでした。2020年からはコロナ禍もありましたし。友人がものすごく心配してくれて、いろいろ助けてくれて。女性起業家の友達がアルバイトで採用してくれて、なんとか生活を立て直すことができたので、今でも彼女にはとても感謝しています。
ーーひょっとして、その間はうつ病などに。
松阪 なりました。貯金もゼロに等しくなって。記憶がなくなるくらい辛い時期でした。
加害者の情報を見ると、フラッシュバックしてしまう
ーー被害を受けているのに、自分を責めてしまったり?
松阪 自己肯定感がガクンと下がるんです。「舐められやすい性格なんじゃないか」とか「自分は何もできない無力な人間なんじゃないか」といったことを考えるようになって。しまいには「そもそも起業なんか目指すんじゃなかった」って、めちゃくちゃ後悔して。夢が後悔になってしまったのは、ほんとに辛かったです。
私はほんとに起業するのが夢で生きてきたし、起業家への憧れみたいなものがすごくあったんですよ。起業家の方々が書いた本も読んできたけど、そのなかには後に加害者になる人の本もあって。なんか、そういうのも含めて一気に崩れ落ちてしまって、夢を持てなくなりましたね。
ーーいまもフラッシュバックなどが。
松阪 セクハラをしてきた人が経営する会社の社名を見たり聞いたりすると、すごくつらくて。セクハラの加害者が有名だと、しょっちゅうニュースでその人の顔や会社名が出てくるんですよ。もう顔なんて見たくないのに、Xのタイムラインなどで「その人が活躍している」情報を見ちゃうと、フラッシュバックしてしまうんですね。
つらい体験をして心身に深いダメージを受けた人が回復するためには、心理的安全性というのがすごく大事だと言われていて。加害者と一線を引くことで、自分の安心な居場所を確保するんですね。でも、加害者が有名だったりすると、それが難しくなるんです。
私の場合、セクハラを受けたのは数年前ですが、その後、嫌がらせをされたり、あらぬ噂を流されたりして、今もその対応にも追われているんです。そのせいで、フラッシュバックや体調不良が長引いているのかなとも思います。