自殺、殺人、孤独死……。日々、そうした“事件”によって、日本中に新たな事故物件が生まれています。部屋を借りる側(買う側)からすると、そうした事故物件はなるべく避けたい、というのがほとんどの人の本音だと思います。しかし、部屋を貸す側(売る側)にしてみれば、なんとか手を尽くして「事故物件をお金にしたい」と思うのも、正直なところでしょう。
では、不運にも事故物件のオーナーになってしまった人たちは、現実にどんな手段で“有効活用”しているのか。そうした例をみるのにぴったりな街があります。それは北海道の札幌市。不思議なことに、札幌には特殊な「ポスト事故物件」の例が、いくつも集まっているのです。(全2回の1回目/後編に続く)
火災で入居者が死亡した「101号室」
最初にご紹介したいのは、札幌駅から車で10分ほどのところにある鉄筋コンクリートのマンション。その一室で5年ほど前に火災があり、入居者の方が亡くなりました。ただ、不幸中の幸いで火の手がマンション全体に及ぶことはなく、事件後建て替えはもちろん、リフォームとしてもあまり大掛かりな工事は必要なかったようです。
しばらくしてからそのマンションを訪れてみると、火災があった部屋の窓には一枚の貼り紙が掲げられていました。そこに書かれていたのは、「屋内物置募集中」との文字。つまり、その事故物件はレンタル収納スペースになっていたのです。
実は、火災があったのはたまたま101号室。その部屋へ行くには階段をのぼる必要がなく、道路側からも入りやすい、レンタル収納スペースとして貸し出すにはうってつけの場所だったのです。ただ、ここで一番重要なのは、こういう形であれば貸す側に「告知義務がない」という点です。
事故物件につきものの「告知義務」とは?
以前もご説明しましたが、不動産業においては「告知義務」というものがあります。宅建業法で定められた義務の一つで、これがあるために、前の入居者がそこで自殺していたり、あるいはその部屋が殺人事件や火災死の現場になっていたとしたら、業者は契約が成立する前に、必ずその旨をお客さんに伝えなければなりません。