「これは、大学の夏休みに友人たちと、××県にある有名な心霊スポットへドライブに行った時の話です……」

 誰もが一度は聞いたことがある「怖い話の出だし」だろう。

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 心霊スポットへドライブに行った彼らはこの後、

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・危うく崖から落ちそうになって後ろからおばけに「死ねば良かったのに……」と言われたり
・廃病院からカルテを持ち出しておばけの看護師さんから電話がかかってきたり
・運転しているやつが下から生えてきた手に足を掴まれて「俺たち、友達だよな?」って言ってみんなに見捨てられたり

 するわけだが、今回考えていきたいのはそうした本編ではなく、この出だしのシチュエーションについてだ。

怪談の導入は「レジャー」から「生活」へ

「最近、テレビの怪談番組で『みんなで心霊スポットに行って怖い目に遭う』話を見ない気がする」

 友人との雑談で、季節柄もあって「怖い話」の話になった時、そんなことを言われた。

 確かにそんな気もする。実際に調べてみることにした。

 毎夏、特番が放送されるフジテレビのオムニバスドラマ『ほんとにあった怖い話』は、公式サイト内で「バックナンバー」として、連続ドラマ時代から昨年の「夏の特別編2018」までの放送内容が紹介されている。

ほんとにあった怖い話』(フジテレビ系)HPより

 2003年の連続ドラマ第1期には、「みんなで心霊スポットに行く」出だしの作品は、全11回・42話中5話、発見できた。およそ2回に1回は、そうした話が放送されていたことになる。

 一方で最近の放送回を見ると、「夏の特別編2010」で放送された「叫ぶ廃病院」を最後に、それ以降「みんなで心霊スポットに行く」物語はつくられていないことが分かった。

 それに代わって増えているのが、清掃や解体など「仕事でやむなく心霊スポットに近づくことになる」導入や、「家賃が安いからと住んだ部屋が実は事故物件だった」という筋書きだ。

 登場人物が怪異に近づく理由づけが、「レジャー」から「生活」へシフトしていることがうかがえる。では、その理由背景には何があるのか。

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製作陣は不法行為を描きたくない?

 まず想像できるのは、テレビ番組に課せられる制約が年々厳しくなっていることだ。

「子供に悪影響を与える」と言われれば、それがドラマで「不良」と明示されているキャラクターであっても、未成年の喫煙シーンは描けないというご時世だ。

 言うまでもなく、「みんなで心霊スポットに行く」物語の主人公たちは、訪問前に地権者や物件の管理会社に見学の許可を取ったりはしない。

「正しさ」が求められる時代、怪異へ近づくきっかけが「レジャー」から「生活」へシフトした背景には、作中で不法行為を描きたくないという製作陣の意向が読み取れそうだ。

――だが、それだけだろうか。

 筆者には、この変容にはもっと深刻な意味があるように思えるのだ。