自殺、夜逃げ、事件、事故……以前の入居者がワケありで退去した、いわゆる「事故物件」にまつわる奇妙な体験談を、間取り図と合わせて紹介した、ユニークな怪談本が話題だ。著者は「事故物件住みます芸人」として、ウェブやラジオを中心に活躍するタレント。
「こんな本を作っておきながら、どちらかというと私自身は怪談が苦手なんです(笑)。著者を知ったのも、そもそもは珍しい物件に対する関心からの流れでした。しかし、『盛った』ところがなく、実体験を淡々と語るだけなのにしっかり怖がらせる話の構成力や、芸人さんならではのユーモアのある語り口に惹かれて、怖い話の原稿をお願いすることにしたんです」(担当編集者の千田麻利子さん)
初著作であり、版元も怪談本が得意なわけではない。そんな状況からのヒットの背景には、書店の助力と著者の地道な活動があった。
「刊行直後から、文芸コーナーを担当する日本各地の『目利き』の書店員さんが推してくださったんです。くわえて、もともと著者が日本各地を『怪談ライブ』で回られていたことで、広い地域で着実にファンを獲得していたのも大きかったですね」(千田さん)
スタイリッシュなデザインの力もあってか、女性読者を中心に、あまり怪談本を手に取らない読者層にも届いているとか。怪談本ニューウェーブが生まれるか。
2018年7月発売。初版4500部。現在16刷8万部