『看護師も涙した 老人ホームの素敵な話』(小島すがも 著)

 超高齢化社会の現実を前に、さらに存在感を増すであろう老人ホーム。その日常を笑いあり、涙ありで綴ったノンフィクションが、静かな反響を呼んでいる。一部看護師のあいだでは、老人ホームは引退間近に働く「看護師の墓場」と呼ばれているそう。著者は半ば偶然のきっかけで、若くして老人ホームで看護師として働くことになり、やがて、思わぬやりがいを仕事に見出していった。穏やかな視点は、そうした経験の反映でもあるのだろう。

「原稿を発注する上でお願いしたのは、とにかく、老人ホームの『良いところ』だけを書いてほしいということでした。入居者にもその家族にも根深く残っている、老人ホームに対するアレルギー反応をなくせる本になったら……と考えて、企画を立てたんです」(担当編集者の保川敏克さん)

 気難しい入居者と看護師に生まれる絆、老いた親と子の複雑な距離感、認知症になっても消えない夫婦愛、身寄りのない人の抱える寂しさ……。

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「主な読者層は60代から80代です。これから老人ホームに入る可能性がある方、すでに親を入れている方、実際の入居者ですね。著者の同業者も多いです。どんな立場の方にも共感されているのは、著者の才能だと思います」(保川さん)

 イラストレーター・安斉将のイラストも、本を親しみやすい印象にしている。

2018年5月発売。初版6500部。現在12刷12万5000部

看護師も涙した 老人ホームの素敵な話

小島すがも

東邦出版

2018年5月1日 発売