1945年、終戦迫る6月に、16歳で医者の道を志す。その後、89歳の現在まで精神科医として働き続けている著者。戦後の激動を切り抜ける中で鍛えられた慈愛あふれる言葉を、元同僚であり、作家としても活躍する書き手が温かくまとめた本が評判だ。
「もともとは書き手の奥田先生から、中村先生の波乱に満ちた人生を伝記としてまとめたいとご相談を受けたのが企画の始まりでした。しかし話し合ううちに、悩んでいる人の背中をそっとさすってあげるかのような、中村先生の深い人生論を伝えるための本を作りたいと、関係者の気持ちが変わって行ったんです。そして結果的に、伝記的な内容のコラムで裏付けられた中村先生の教えを伝える、独特な構成が生まれました」(担当編集者の吉本竜太郎さん)
「人を変えることにエネルギーを使わない」「『自信がない』は、悪いことじゃない」「人間関係の秘訣は、『距離感』に尽きる」など、記されたメッセージはどれも穏やかだが、力強い。著者の「日々たんたん」な姿勢が現れているかのようだ。
「読者はがきに、感想と合わせて『感謝』の言葉が書かれていることが多いんです。あまりないことで、驚かされますね」(吉本さん)
なお、著者は新規の診察依頼はさすがに断っているそう。貴重な助言は、本の形で味わうことにしよう。
2018年6月発売。初版4500部。現在11刷10万部