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瀧澤 信秋
2017/05/03

ホテル予約の現実1「直前キャンセルという大問題」

 ホテル評論家として“ホテル”と名の付く施設に日々泊まりまくっている筆者が、連休中に役に立つ「ホテル予約術」を伝授します。

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キャンセル問題はホテルにとって深刻

 多くの人々が旅行に出かける連休は、ホテル業界にとっても活況を呈するベストシーズンのはじまり。一方、ホテルにとって困るのが直前のキャンセルだ。稼働に余裕がある時ならばいざしらず、満室続きの超繁忙日に直前キャンセルされ、結果売れ残れば、高く売れる時だけに痛手だろう。インバウンドの団体が数十室単位で直前キャンセルしてホテル困惑、というニュースも話題になった。ホテル予約術の具体例に入る前に、今回は利用者の倫理欠如という点からも問題視され、ホテル業界でも重視されている直前キャンセル問題の実情を考えたい。

 ホテルのキャンセルポリシーを見ると、3日前からキャンセル料が発生するというケースが多くみられる。前日50%~80%、当日100%というケースが多いだろうか。中には「連絡なしの不泊(ノーショー)に限って100%」という記載も見られるが、キャンセルするならとにかく連絡がほしい、という悲痛な叫びのようにも見受けられる。最近では1週間前、10日前からキャンセル料が発生、というようにキャンセルポリシーのハードルを上げるホテルも増えてきた。

 一方、ハードルを上げることで利用者が予約を躊躇した結果、他のホテルへ流れてしまうという危惧もホテル側にはあるようで、早期からのキャンセル料発生というポリシーはなかなか広まっていないのが現状だ。予約時のクレジットカード決済処理や申込金の受領も理想であるが、徹底されていないという。確かに事前クレジットカード決済は、事後の予定変更は許されないという縛りを感じ、クリックを躊躇する気持ちは理解できる。

キャンセル料を請求しない慣習が問題に

 キャンセルポリシーの緩さと共に、ホテル業界で問題視されているのがキャンセル料の不請求問題。多頻度のホテル利用者であれば、心当たりのある方がいるかもしれない。3日前はもとより当日のキャンセルでも、実際にキャンセル料が請求されたという声はそう多くない。宿泊施設の業界団体である「財団法人 宿泊施設活性化機構(JALF)」でも、「民法上の契約に端を発するキャンセル料(特に繁忙期)の収受に努める」ことを広報活動のひとつとして明示しており、ホテル間で温度差はあるものの、業界としての機運は高まりつつある。

 確かに当日100%と定めていても、規約通りに請求しにくい事情もホテルにはあるようだ。「予約者の病気や事故といった不慮の事態では請求しにくい」「厳格に請求するよりもケースバイケースとして扱うことで、予約者に好印象を与えられれば、次回の予約に繋がるといった期待もある」と言うホテル関係者もいる。予約している時点で宿泊候補のホテルということでもあるし、優しくされた印象から次の機会には泊まってみようという気分になるかもしれない。一見ホテル側の厚意ともとれるが、請求することと支払われることは別であり、回収の手間を考えると割に合わないということも実状としてあるという。

 最初から第一候補のホテルが予算内で予約できれば問題ないのだが、ホテルを多く利用していると遭遇するのが、早期では満室だったお目当てのホテルに直前キャンセルが出るケース。第一候補のホテルが満室だったので、仕方なく第二候補を予約(仮押さえ)しておいたが、当日第一候補に空室が出たので乗り換えたという例や、同じホテルでも「予約時より当日に安いプランが出されたので予約し直した」という利用者の声を聞くことがある。心当たりがある方もいるのではないだろうか? ホテルにとっては迷惑この上ない話であるが、これもキャンセル料未請求問題がもたらしている側面がある。

 一般に日本のホテルが規定するキャンセルポリシーは、諸外国に比べて緩いと言われている。困ったときはお互い様、という日本人特有の助け合い精神がホテル業界にも息づいているのだろうか。

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