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西澤 千央
2017/04/30

【DeNA】ハマのファーストには頼れる中間管理職「ロペス課長」がいるのです

文春野球コラム ペナントレース2017

円滑に社内業務を遂行する「ロペス課長」

 ホセ・ロペス内野手のことは、しばし敬愛を込めて「ロペス課長」と呼んでおります。恥ずかしながら会社員経験がほとんどない、実家の飲み屋手伝いからフリーランスライターになった私にとって「課長」という響き、マジで魔性。身の丈以上の仕事を任されたダメOLの私が、案の定毎晩遅くまでひとり残業していると、やってくるんですよ、課長が。

昨シーズンはキャリアハイとなる34本塁打を記録した「ロペス課長」 ©時事通信社

「あれ……今日課の飲み会だったんじゃないんですか?」という私に「いやぁ、僕いないほうが盛り上がるでしょ」と照れ笑いする課長。「あんまり根詰めるなよ。ほら、夕飯食べてないんだろ」と手渡された紙袋には炭水化物の王様・焼きそばパンとよく冷えた缶ビールが。課長……一生ついていきます!! 

 みたいな妄想をしばし繰り広げていたわけですが、勤め人の友人に聞くと「たまたま入った飲み屋に高橋一生がいるくらいありえない」とのこと。ちなみに「お昼休みに会社の屋上でバレーボールをするOL」も「腕に黒いカバーをつけたベテラン経理」もいないんだって。昭和は遠くなりにけり。

 と、そんなことはどうでもいい。ロペス課長です。私がロペスを課長と見染めたのには、きっかけがありました。それはまだプレイングマネージャー谷繁時代の中日、いわゆる3D、ルナ、ナニータ、エルナンデスが活躍していた頃。御多分に漏れず、陽気なドミニカンが大好きだった私は、彼らを脳内で「名古屋助っ人OL3人組」と呼び、勝手に湯けむり殺人事件に遭遇させたりしていました(だいたい犯人は「プレイング女将の繁子」)。特にハマスタで中日戦があるときは、

「名古屋助っ人OL3人組。遠征した港ヨコハマで偶然見つけた変死体……鍵を握る赤い靴のメロディー……」

 など火サス風タイトルをつけ、試合そっちのけで楽しんでいたわけです。そこに登場するのが、くだんの「ロペス課長」でした。リーダー格のル奈が死球を受けて鼻息荒く出塁すれば「まぁまぁ落ち着け」と静かになだめる。その風格、たたずまい、まさに課長。下からの突き上げ、上からの圧力にぐっと耐えながら円滑に社内業務を遂行する、その気苦労までが私にははっきり見えたのです。

 ヤンチャなナニ絵にもエル子にも一目置かれる存在、それが一塁の中間管理職、ロペス課長。かつて我がベイスターズ株式会社にいた、スーパーエリート社員のグリ男くん。根っからのスター気質ゆえ、ミスターたたき上げであるバルさんとどう考えても馬が合わなそうだったけど、もしここに課長がいたら……とたまに考えます。

「課長」を張れる助っ人外国人はそういない

 先日、こんなシーンを目にしました。4月16日、ハマスタ、ヤクルト戦。7回にコールされたのは、山﨑康晃投手。早すぎるゾンビ・ネーションにハマスタはどよめきました。4月13日の阪神戦、4月14日のヤクルト戦の失敗から、リリーフを外された直後のマウンド。

 そこへ真っ先に山﨑に近づいていったのが、ロペス、いやロペス課長。一言二言言葉を交わして、再び一塁へ戻りました。この試合で5打数2安打、2打点の活躍を見せた課長はヒーローインタビューにて、このときのやり取りについてこう話しています。

「(山﨑に)今までのことは忘れて、準備したことをしっかり出し切れと伝えました」

 本当は9回のハマスタをやすあきジャンプで揺らしたい。だけど、今は中継ぎとして結果を出さなければ……そんな山﨑のプレッシャーと不安を察して、真っ先に声をかけてくれる、こんな助っ人外国人います? こんな課長より課長な助っ人外国人います? 私は思いました。たまたま入った飲み屋に高橋一生はいないかもしれない。でも、誰よりもチームのことを気にかけてくれるロペス課長はハマスタのファーストにいる、と。

「元々はMLBとかいう外資の超やり手だったらしいよ。腕見込まれて日本の某有名企業に引き抜かれてからも、かなりの成績上げてたみたいだけど、社内のポジション争いに敗れてねぇ、ハマまで流れてきたって噂」

 ロペス課長、そんな過去の栄光をおくびにも出さず、今はベイスターズ株式会社で楽しそうに野球をやってくれているのが何よりも嬉しい。マスコミ向けの目立つようなパフォーマンスは全然しないのに、雨天中断のベンチでは梶谷の、割と悪意が滲む(そこがいい)モノマネをしたり、ラテンのラの字もない道産子砂田を無理やり謎のダンスに引っ張り込んだり、雰囲気を良くするためにあえて空気読まないおじさんにもなれる、それがロペス課長。

 車には乗らずいつもPASMOを持ち歩いている堅実なロペス課長。調子悪くなるともううんともすんとも言わなくなるけど、逆にアゲアゲのときは意味不明に3打席連続ホームラン打ったりするロペス課長。若手内野陣からのとんでもない送球もなんなくさばいてくれるロペス課長。決して派手ではないけれど、いなくなったときにわかる、ファーストロペス課長のありがたさ。あなたがちゃんと処理してくれるから、若手は思い切ったプレーができるんです……。

 球界広しといえども、課長を張れる助っ人外国人はそういません。ああ親愛なるロペス課長、今年は業績アップでわが社もドーンと日本シリーズとかいうやつ行っちゃいましょう。そのときは有給のハンコを何卒。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。

 

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