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連載NHK大河ドラマ「真田丸」の舞台 真田氏ゆかりの地をめぐる

第12回【蓮華定院その2】昌幸・信繁が高野山に配流になった際、最初に逗留した寺院

『真田三代』 (火坂雅志 著)

2016/10/08

genre : エンタメ, 読書

note
蓮華定院には真田の家紋の六文銭が随所に見られる。入り口である門の提灯にも六文銭が

 前回は蓮華定院に残されている真田氏ゆかりの部屋や書状、墓所を紹介したが、今回は宿坊としての蓮華定院の魅力をレポートする。

 蓮華定院は高野山真言宗を宗旨とする寺院で、鎌倉時代の初め頃、行勝上人により創建された。前回でも紹介したが真田氏の祖先である海野氏の時代から宿坊契約を結んでいたので、昌幸が当主になってからも代々宿坊契約を更新している。昌幸・信繁の死後は松代に移った信之が真田家の高野山における菩提寺として引き続き保護した。

 院内には昌幸・信繁の高野山での生活を偲ぶことができる上段の間や数々の書状が残されているが、宿泊者しか閲覧することができないし、様々な宿坊体験ができるので宿泊することをお勧めする。

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蓮華定院は真田家の宿坊であったことから「真田坊」とも呼ばれている。食事をする部屋には「真田坊」の書が
障子にも六文銭
柱の随所に見られる釘を隠すための「釘隠し」にも六文銭があしらわれている。柱に打ち付けた釘の頭が見えていると見苦しいので隠しているわけだが、ただ釘を隠すためのものにも様々な意匠を凝らした金具を使う日本人の繊細さや芸術性に感嘆せずにはいられない
蓮華定院の大きな魅力の1つに、敷地内の随所にある美しい日本庭園が挙げられる。細かい部分まで手入れが行き届いており、眺めているだけで心が穏やかになる
ほとんどの部屋が庭に面しており、部屋にいながらにして美しい風景を楽しむことができる
夜のライトアップされた庭も昼とは違った趣の美しさ
僧侶による護摩焚き修行の様子。宿泊者は護摩焚き体験もできる(※通常は撮影禁止。許可を得て撮影しています)
朝の勤行の様子。僧侶たちの読経に耳を傾けているだけで魂が浄化されるような気持ちになる(※通常は撮影禁止。許可を得て撮影しています)
写経場。額にも独特の味わいが

 宿泊者は毎朝6時から行われる朝の勤行(ごんぎょう)にも参加できる。40~50分ほど添田住職を始めとする僧侶たちの読経、その後住職の説法が10~20分ほど。添田住職の話術は見事で、元高野山高校の校長を務めていただけあって(現高野山学園理事長)説法はわかりやすく、思わず引き込まれて時間を忘れてしまうほど。筆者が宿泊した日はたまたま日本人しかいなかったが、通常は外国人の宿泊者の方が圧倒的に多いという。そんな時は英語でも説法を行う。中には勤行中に涙を流していたからその理由を聞くと、「ようやく高野山に来て思い描いていた日本と出会った」と静かに興奮しつつ語る外国人もいるという。ちなみに外国人の中ではフランス人の来訪者が最も多いそうだ。また、17時30分からは阿字観という瞑想の修行があり、これにも参加できる(約40分間)。未体験の人も心配ご無用。住職の指導が受けられる。そのほか希望者は写経もできる。

 高野山という世界遺産にも登録された日本屈指の霊場に建つ、由緒と歴史のある寺院だが添田住職始め、ほかの僧侶や寺務所のスタッフもフランクかつ丁寧に接してくれるので、肩肘張らずに真田の歴史に触れ、宿坊体験ができる。

蓮華定院
所在地:和歌山県伊都郡高野町高野山700番地
電話番号:0736-56-2233
交通アクセス:南海高野線「極楽橋駅」から南海高野山ケーブルで終点「高野山駅」へ。南海りんかんバスで「一心口」下車徒歩1分
宿泊料:9000円~

取材協力/蓮華定院

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2014年11月7日 発売

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第12回【蓮華定院その2】昌幸・信繁が高野山に配流になった際、最初に逗留した寺院

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