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終われない21世紀型映画からの逃亡 小島秀夫が観た『ローガン』

2017/06/11

genre : エンタメ, 映画

note

 本作は『X-MEN』でも『ウルヴァリン』でもなく、まぎれもない『ローガン』という名の、1本の映画である。

 当たり前のことを言っていると思うだろうか? 1本の映画とは、ひとつの物語であり、当然、そこには始まりと終わりがある。『ローガン』にはそれがある。

『ローガン』は、21世紀の映画(特にヒーローが登場するエンタテインメントのジャンル映画)をめぐる状況下で、「1本の映画」として成立した特別な作品なのだ。殊更にそれを指摘しなければならないほどに、現代の映画をめぐる状況は変化している。

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『LOGAN/ローガン』 6月1日(木) 全国ロードショー 20世紀フォックス映画配給 ©2017Twentieth Century Fox Film Corporation

21世紀型映画とは何か?

「スター・ウォーズ」「マーベル・シネマティック・ユニバース」「DCエクステンデッド・ユニバース」、キングコングやゴジラが共存する「モンスターバース」、トム・クルーズの『ザ・マミー』を皮切りに始まる「ユニバーサル・モンスターズ・ユニバース」など、ハリウッドの大作シリーズは、軒並み「終わらない」「永遠に続く」世界を志向している。いわゆる「シェアード・ユニバース」型と呼ばれる21世紀型の映画シリーズである。

 さらに、『スプリット』を公開したばかりのM・ナイト・シャマランまでもが、つい先日、『アンブレイカブル』と『スプリット』の続編の製作を発表した。ただの続きではなく、2作品を融合させた一つの続編を作ると言うのだ。鋭利な刃物で切断したかのような鮮やかな物語のエンディングを見せて我々の度肝を抜いてきたあの名手シャマランまでも、ユニバース化する=終わらない映画エンタテインメントに挑もうというのである。

 ウルヴァリンこと“ローガン”が登場するX-MENシリーズも、マーベルコミックの原作で、独自のユニバースを形成している。2000年にヒュー・ジャックマンがウルヴァリンを演じた『X-MEN』が発表されて以来、2017年の本作まで、足かけ17年、計9本の作品が作られている。このX-MENユニバースにおいて、不老不死の身体をもつウルヴァンリンは、「終わらない」「永遠に続く」という「シェアード・ユニバース」の世界観を体現する象徴的なキャラクターだ。