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【日本ハム】雨の匂いに包まれた神宮で幽体離脱しなかった有原航平

文春野球コラム ペナントレース2017

「オゾンの匂い」に包まれた神宮外苑の森で

 交流戦最後に当たったヤクルトはびっくりするほど強かった。うわさではケガ人続出のどん底で、巨人に負けない大型連敗をしたはずだった。それがフタを開けたらゴンゴン打ってくる。

 第1戦は藤井亮太ソロ、グリーン2ラン、そして荒木貴裕3ランで試合をひっくり返された。第2戦は山田哲人3ラン、大引啓次ソロで勝負あった。山田哲人は絶不調と聞いていたけどなぁ。思えば楽天・則本昂大を攻略し、2ケタ奪三振の連続試合記録を8で止めたチームだ。ヤクルト打線は復調しつつある。

 というわけで3タテだけは避けたい6月18日、第3戦なのだった。東京は雨の予報。地下鉄銀座線のホームが異様な湿気でもわっとしていた。外苑前で地上に出ると雲が分厚い。これはいつ雨が降りだしてもおかしくない。カビのような土のような匂いがする。これはポツポツ来ると強く匂う。小学生の頃は「オゾンの匂い」じゃないかと勝手に思っていた。神宮外苑の森が「オゾンの匂い」に包まれる。いや、本当は何の匂いか知らないのだけど。

 今年はカラ梅雨かと思っていたら、交流戦最後になって雨模様だ。金曜日の第1戦はゲリラ豪雨のようなやつがうまく神宮を逸れた感じだった。土曜はどうにかもった。今日は15時くらいに本降りになるらしい。最近は天気予報の精度が上がっている。

 雨天コールドがあり得るから先制点がカギだ。交流戦っぽいなぁと思う。神宮やハマスタで天気の心配をするのだ。何で(短期間に日程消化する必要があるのに)梅雨どきに交流戦組むかなぁとカッパ姿で毎年思うのだ。リュックや鞄は45リットルのゴミ袋を持参して、中に入れてクチを閉じるのだ。

この試合の主題は「雨」だ

 先発はヤクルトが石川雅規、ハムは有原航平。交流戦の最後を飾るにふさわしいエース格の対決だ。石川は僕の大好きな投手だ。変化球投手だと思ってると球の強さにやられる。見かけによらない本格派左腕というのかな。気持ちがめっちゃ強い。

 いつの交流戦だったか、田中賢介が石川のひざ元に落としてくる球を全打席ずーっと狙ってることがあって、「プロvsプロ」のすごいもん見ちゃってるぞとしびれたのだ。石川もわかってるんじゃないかと思えた。だけど、賢介が狙いを変えない。僕はまるで2人が野球で会話をしてるようだなぁと思った。

 有原は1ヶ月近く勝ちから遠ざかっている。今季はチームの柱としての活躍を期待されたが、背信のマウンドが続いている。そんなに悪い投球には見えないのだ。が、なぜかあっさり大量失点する。

1ヶ月近く白星から遠ざかっていた有原航平 ©文藝春秋

 ニュアンスをいうと有原航平から有原航平が幽体離脱してるようなのだ。時間にしてほんの4、5分だ。その間、ぬけがらの有原航平はポンスカ打たれる。で、しばらくして有原が有原に戻ってくる。あ、いかんなぁという顔をする。というと冗談を言ってるように聞こえるだろうが、心・技・体の何かがズレてる感じなのだ。いいときの有原はエネルギーがギュッと詰まった印象だ。世界をつくっている。僕らはそれを「有原キングダム」と呼んでいる。

 この試合の主題は「雨」だと考えた。雨をどう味方につけるか。先発は降雨コールドを計算に入れて飛ばすべきなのかもしれない。このところ中継ぎ、抑えが完全にへばってるから、理想をいうなら6回裏くらいにザーッと来てコールド勝ち(1-0か2-0)がいい。もちろんそこまで有原が三振の山を築く好投だ。「雨天試合」は「打てん試合」というから、ゲッツー崩れの1点が決勝点くらいでいい。打てない前提で勝ちを拾いたい。

 ただザーッと来た後、案外おさまったりして、プレー再開というケースがある。中断明けに波乱が待ってたりすると困る。うちはなるべく有原を引っぱりたい。鍵谷陽平、谷元圭介、宮西尚生、増井浩俊、勝ち試合のリリーフが全員バテている。といって雨の中断はスイッチ入れたり切ったり難儀なことだ。スイッチ切ってるうちに有原から有原が抜け出してしまわないとも限らない。