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連載池上さんに聞いてみた。

池上彰氏が解説するブレグジット 離脱後に「イギリス自体がバラバラになりかねない」理由

池上彰氏が解説するブレグジット 離脱後に「イギリス自体がバラバラになりかねない」理由

池上さんに聞いてみた。

2020/01/31
note

 Q イギリスのEU離脱、残留派が多かった地域はどうなる?

 1月31日に、イギリスがEUを離脱することになりました。2016年のEU離脱の是非を問う国民投票では残留派が多かったというスコットランドや北アイルランドの地域からは、今後どのような反応が予想されますか。(10代・女性・学生)

A イギリス自体がバラバラになりかねないのです。

 スコットランドにも議会があり、自治政府があって首相がいます。イギリス国内でそれなりの自治が認められているのです。

 ご質問の通りスコットランドはEU残留派が多く、「イギリスがEUから離脱するのなら、スコットランドはイギリスから離脱しよう」という動きがあります。

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 去年12月の総選挙で、イギリス全体ではEU離脱を主張するボリス・ジョンソン首相率いる保守党が勝ちましたが、スコットランド議会に限ると、スコットランド独立派のニコラ・スタージョン自治政府首相率いるスコットランド国民党が59議席のうち48議席を獲得しています。

 この勢いを受けてスタージョン首相は去年暮れ、独立の是非を問う住民投票を再度実施することを認めるようにジョンソン首相に要請しました。

イギリスのボリス・ジョンソン首相 ©AP/AFLO

 しかし、ジョンソン首相は今年1月14日、この要請を認めませんでした。スコットランドに離脱されては困るからですね。スコットランドも、イギリス政府の許可がないと住民投票できないのです。 

 実はスコットランドは2014年、イギリスからの独立を問う住民投票で、55%対45%で残留が上回り、イギリスに残ると決めています。このときはキャメロン首相が住民投票を容認したので、投票ができたのです。

 ジョンソン首相の拒否に対してスタージョン自治政府首相は強く反発。イギリス政府の承認がなくても住民投票することができないか検討に入っています。

 また、同じく残留派が多い北アイルランドでも、アイルランドとの合併を求めるニューIRAと呼ばれる組織がテロを始めています。

 イギリスはEUから離脱できましたが、イギリス自体がバラバラになりかねないのです。

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