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新江ノ島水族館「クラゲ展示はここから始まった」――水族館哲学2

水族館プロデューサー・中村元の『水族館哲学』から紹介します

2017/07/08
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『水族館哲学 人生が変わる30館』(中村元著)

 水族館のすべてを知り尽くす敏腕プロデューサーが、全国の水族館から30館を独自の哲学で選んだ『水族館哲学 人生が変わる30館』が刊行されました。今回紹介する新江ノ島水族館は、中村さんが水族館プロデューサーとして独立して初めて手がけたところ。いまやメジャーな展示であるクラゲや、ショーアップされたイルカショーなど、この水族館発で有名になったものがたくさんあります。

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挑戦的・先進的展示法の先駆者

 60年間にわたって日本の水族館業界を牽引してきた江の島水族館に代わり、2004年、新江ノ島水族館としてリニューアルオープンした。それから10年余経った今、スタッフの努力で、江の島水族館の時代に劣らず、新しい水族館の時代を切り開いている。 

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 新江ノ島水族館は、目の前に広がる相模湾について展示することにこだわった水族館だ。水族館の主な部分が、相模湾をテーマに展示がなされている。そのため、川の展示も相模川の上流の展示一本に絞られている。 

陽光にきらめきながら形を変えるイワシの大群、岩の隅々にナニモノかが潜むような暗がり。江の島沿岸を再現した大水槽は、日本人の感性を呼び覚ます水塊だ。

 また、江の島水族館時代の長い歴史の間に積み上げた技術を存分に活かした、新感覚の展示も見所だ。日本で初めてクラゲ展示を始めた誇りが、クラゲ展示に特化した癒しのホールの設置に繋がり、長いイルカショーの歴史が、日本初のミュージカル仕立てのイルカショー「ドルフェリア」の上演へと結びついた。いずれも挑戦的かつ先進的な展示として、今後の水族館の歴史に残るだろう。

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