アンナ・パキンとキャシー・ベイツ
日本人以外で忘れられないのは、第66回『ピアノ・レッスン』(93)で助演女優賞を獲ったアンナ・パキンです。当時まだ11歳の可愛い少女でした。
壇上に上がった彼女は興奮しすぎてしまい、最初の1分くらいはぜいぜいと呼吸を繰り返すだけで何もしゃべれませんでした。
しかし、周りが「ちょっとどうしようかな」と思い始めた時、突然彼女はすらすらと話し始めたのです。「ジェーン(・カンピオン監督)、ジャン(・チャップマンプロデューサー)&ホリー(・ハンター/同作の主演女優で、主演女優賞を受賞)に感謝します」ああ、良かった、ちゃんと喋れたとホッとするとともに、その子供らしさに魅了されました。ものすごく可愛かったです。
第63回『ミザリー』(90)で主演女優賞を受賞したキャシー・ベイツのスピーチは感動的でした。その内容は、同作で演じた狂人アニー・ウィルクスの役柄とは違い、落ち着いた、時にユーモアを交えたもの。関係者に一通り感謝した後、友人、そして家族に感謝の言葉を述べたのですが、最後、「お父さん、どこで見てるかは分からないけど、見ていてくれているといいなと思います。ありがとう」と、どこにいるか分からないお父さんに向けて涙を堪えながら感謝を伝えたのです。それまでが落ち着き払った大人のスピーチだっただけに、最後にエモーショナルになったのは印象に残りました。
エイズ患者に寄り添ったトム・ハンクスのスピーチ
授賞式で涙する人は少なくありませんが、第66回『フィラデルフィア』で主演男優賞を獲ったトム・ハンクスも良かったです。
同作はエイズにかかった主人公が裁判で戦い、最後に勝利を勝ち取る話なのですが、彼のスピーチはそれまでに亡くなった無数のエイズ患者に寄り添う内容で、涙ぐみつつ話す彼の姿には心を打たれました。
彼はこの次の年も『フォレスト・ガンプ』(94)で主演男優賞を獲りますが、この1度目の受賞の方がずっと感動的だったと記憶しています。