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西澤 千央
2017/07/17

【DeNA】夏の日の2015 あの日見た息子の涙とベイスターズの未来

文春野球コラム ペナントレース2017

私は今、やきゅうのみらいを連れている

 私の元に生まれてきてしまったばっかりに、ベイスターズファンという十字架を背負わされてる。小学生にして現実の壁を見せつけられている。敗者のメンタルという負の遺産を、この世代に引き継がせていいのか。親らしいことを何一つしてあげられていないこの子に、今私がすべきことは何なのか。顔をくしゃくしゃにして泣いている息子に私は言った。

「行こう、明日。ハマスタに行こう。勝つとこ見よう」。応援しても無駄なんて思わないで。行って、自分がここで応援してることをあいつらに分からせよう。「いっくんはどうするの?」「連れて行く」「でも……」「なによ」

「明日、マエケンだよ」

 傍から見たら、野球観戦に向かう幸せな親子に見えただろう。京浜東北線に揺られる、筒香Tシャツを着た1歳児とこれまた筒香Tシャツを着た小学5年生とその母親。しかし実際は、終戦直後生きるために買い出し列車に乗り込む親子連れのような殺気と悲壮感が、あのときはあったと思う。関内駅に到着、既に試合は始まっている。夕方だというのに、涼しい浜風は吹いてこない。ベビーカーを預けて、1歳児を抱っこした。急遽取ったチケットはハマスタ最上段に位置する「やきゅうみらいシート」あらため神奈川少年野球応援シート。そうだ、私は今、やきゅうのみらいを連れている。そしてこの子たちに見せるのだ。階段を上がった先にあるベイスターズの未来を。

 割れるような歓声が階段まで溢れてくる。どうか、どうかこの歓声が1塁側のものでありますように……。祈りながらくぐったゲートの先に見えた未来は、乙坂が梶谷が筒香がロペスが宮崎が倉本が、マエケンから初回4点もぎ取る、そんな光景だった。私は息子の汗ばんだ手をもう一度ぎゅっと握った。

青く染まった横浜スタジアムのスタンド ©時事通信社

 中学生になった息子は野球部に入って、相変わらず朝から晩まで野球をしている。1歳だった息子は3歳になり、最近筒香の応援歌がうたえるようになった。ベイスターズは……2015年にとんでもないことをやらかしつつも、それでもあの日見た未来がファンに確かな予感を与えてくれている。あの試合を息子は憶えているだろうか。ベイスターズが負けても、彼はもう泣かないけど。

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