昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

【巨人】今、山口俊にこれだけは伝えたいこと

文春野球コラム ペナントレース2017

30歳のプロ野球選手、そして社会人として寂しすぎる騒動

 やっぱりプロは結果がすべてだな。

 今回の巨人・山口俊の飲酒暴行トラブルの第一報を聞いた時、そう思った。それ以外に感情の持っていきどころがなかったからだ。なぜなら、移籍後たったの4試合しか1軍で投げていないんだよ。まだ巨人ファンは彼となんの喜びも共有していない。いつの時代も、プロ野球選手は試合で結果を残して、ファンとその人生をワリカンする。長年応援してきた選手が晩年衰えても我慢強く声援を送れるのは、全盛期の輝きの記憶があるからだ。あれだけいい思いをさせてもらったお礼に、今度は俺らが声援でその背中を押してやるなんつって。でも、個人的に今の山口俊に対してそういう思い出貯金はない。だって、1勝しかしていないんだから。

 オフにDeNAから3年総額7億円とも言われる大型契約でFA移籍してきて、右肩違和感で春季キャンプはずっと3軍別メニュー調整。6月14日に移籍後初登板を果たすも、その後4試合に先発して1勝1敗、防御率6.43というパッとしない数字が並んでいる。誤解を恐れず書けば、これで山口俊が前半戦で10勝を挙げる活躍をしていたら、マスコミやファンの反応もまた少し違ったいたかもしれない。今回の山口には「いい歳こいた社会人が何やってるんだ」に加えて「そんな成績のプロ野球選手が何やってるんだ」という視点の批判も加味されている感は否めないからだ。

 これは何の職業だってそうだろう。転職組はシビアな視線に晒される。生え抜きから「あいつ給料いくら貰ってんだ?」ってさ。同僚に認められるには結果を残すしかないんだよ。自ら転職してきた30歳が、新しい環境に戸惑い仕事も上手くいかずにストレスを溜める。そんなの珍しいことじゃない。誰だってある。俺だってあるよ。実際に29歳の時にデザイン事務所から化粧品メーカーに転職して、「前の職場に戻りてぇな」と思ったことは何度もある。でもやるしかないじゃん。自分で決めたことなんだから。満員電車に揺られるお父さんも、汗流しながら外回りする営業マンもみんなそうやってそれぞれの人生を生きている。

ここまでパッとした成績を残せていない山口俊 ©共同通信社

そのあやまちが他人の野球人生すら左右する

 今回の事件が4連勝中のチームに与えた影響は大きかった。18日、山口の中日戦直前の先発取りやめで緊急登板して負け投手になった高木勇人はもちろん、4番手でマウンドに上がり2失点した篠原慎平はナゴヤドーム到着が試合開始直前だったという。彼らは皆1軍当落線上の選手たちだ。いわば、そのひとりよがりのしくじりが他人の野球人生をも左右するかもしれない。

 山口俊が酔っ払って暴れて簡単に手放したチャンスを、死ぬほど欲しくても与えられない若手投手はジャイアンツ球場に腐るほどいるよ。そりゃあFA移籍選手には実績があるし、獲得予算も桁違いにかかっている。優先的に起用されるのは当然だ。だからこそ、そのポジションと仕事には責任がある。軽卒な行動というか、プロ野球そのものを軽く見ている感じがして腹が立ったわけさ。

 とは言っても、プロ野球選手が飲み会や合コンをやめろなんて薄っぺらい倫理観を振り回す気はない。こんな時は正義を叫んだり、徹底的に組織を批難するのがラクだよ。でも「子どもの夢を裏切った」なんて屁みたいなロジックは聞き飽きた。おいおいガキを舐めんなよって話だ。そのくらい自分で判断するよ。プロ野球選手は個人事業主。都合の悪い時だけ、球団や上司のせいになんかできやしない。自分のケツは自分で拭くしかないんだから。

はてなブックマークに追加