文春オンライン

連載テレビ健康診断

「カメラを止めるな!」濱津隆之のその後 「絶メシロード」がある意味すごい――青木るえか「テレビ健康診断」

『絶メシロード』(テレビ東京系)

2020/02/21
note

『カメラを止めるな!』を見た時「この人が主演だからこの映画は成功した」と思った。存在が軽くて哀愁に満ちあふれている。でも笑ってしまう。この濱津隆之って人をどうやって探してきたのか、監督はそれだけでもエライと思った。

 そうなると気になる濱津さんのその後の仕事。

「カメラを止めるな!」で優秀主演男優賞を受賞した濱津隆之さん(中央) ©文藝春秋

『絶メシロード』に主演で出ている。『ひとりキャンプで食って寝る』の後番組だ。テレ東深夜の三十分ドラマ。週末、ひとり旅をしながら、絶滅寸前の食べ物屋に出会うお父さん(ヨメさんと娘はアイドルグループのおっかけに忙しい)。おお、ぴったりそうな役じゃんと思った、最初は。

ADVERTISEMENT

 合ってないわけではない。このお父さんの旅にはシバリがあって、予算の都合で車中泊、そこでちょっとヘンな目に遭う。それをなんとかやりすごし、味のある食べ物屋を発見して入って食べる。見るからに「変わった店」に吸いこまれていってしまう。そして思わぬ美味しいものを食べる。お父さんの心の声で、ドラマは進んでいく。

『ひとりキャンプ~』の時も思ったけど、この『絶メシ~』も『孤独のグルメ』の影響をモロに受けている。つくづくあの番組で「たいしてヤマもない日常を心の声で描写することによって味に転化する三十分」というジャンルは確立されたよなあ。ヤマのない日常の、わずかなヤマ場ってどうしても食べ物のことになっちゃうし。原作マンガも上手だったが、ドラマ化もうまかった。それだけに、後発の番組は似せたいし似せたくないし、たいへんだ。

 で、この『絶メシ』を見ていて途中で混乱してくるのが「これは食べ物屋を見せたいのか、それとも濱津隆之を見せたいのか」がわかんなくなってくるのだ。どっかの道ばたで車中泊してると、外でパラピラパラピラとうるさい暴走族みたいなのに取り囲まれて、困った顔で耐える場面がやけに長く続く。想像通りの困り顔がずっと。

 そもそも、これ車中泊する必要ないんじゃないの。何か原作みたいなものがあるならわかるが。「車中泊ブログ」とか。

 と思ったら、ほんとに原作というか原案サイト(『絶メシリスト』)があった。しかしそれは純粋な高崎(群馬)のグルメサイト。え?

 車中泊はドラマ化に際しての脚色というか潤色なんでした。しかしなぜ唐突に車中泊。想像だけど「濱津チャンで何かない? グルメモノなんだけどさー何もなかったら孤独のグルメとかぶるじゃん。車中泊とかどうよ、それでいろいろ困らせたらウケるんじゃね?」とかいう企画会議が目に浮かぶ。

 濱津さんをもっとちゃんと使ってくれ。二時間ドラマの殺人犯役とか、かえって凄かったりするんじゃないかとかずっと考えている。

INFORMATION

『絶メシロード』
テレビ東京系 金 24:52~
https://www.tv-tokyo.co.jp/zetsumeshiroad/

「カメラを止めるな!」濱津隆之のその後 「絶メシロード」がある意味すごい――青木るえか「テレビ健康診断」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー