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『カメラを止めるな!』の元祖、映画『ゾンビ』主演俳優が語った「社会のモラルが低下した時にゾンビは現れる」

ケン・フォリー、ゲイラン・ロス インタビュー

2019/12/15

genre : エンタメ, 映画

 ジョージ・A・ロメロ監督が1978年に放った、ゾンビ・ムービーの金字塔『ゾンビ』。冒頭の惑星爆発シーン、タイプライターで打たれる形で死者の蘇る理由が説明されるテロップ、ショッキング・シーンの静止画&モノクロ処理……。1979年3月10日に劇場公開されたのは、日本の配給会社が編集を施した独自のバージョンだった。諸般の事情でプリントが破棄されて絶対に観られない“幻のバージョン”となった日本初公開版を極限まで再現した『ゾンビ-日本初公開復元版-』(現在公開中)の主演俳優ケン・フォリーとゲイラン・ロスが来日。ふたりにゾンビという恐怖の根源について話を聞いた。(聞き手・構成=平田裕介)

『ゾンビ-日本初公開復元版-』ポスタービジュアル ©1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.
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――ゾンビたちとの攻防にゲーム的興奮を覚える人が多いかと思いますが、やはり『ゾンビ』は恐怖を描いた物語であるはずです。作品を観た人々は、どのような部分に恐怖を感じると思いますか?

ケン・フォリー 視覚的に感じる恐怖という点で話をするならば、冒頭にアパートで女性がゾンビと化した夫に首を噛まれるシーンがあるよね。そこで恐ろしくなって映画館を去る人はそれで終わりだけど、そのシーンを乗り越えられたら最後まで観られる観客は多いんじゃないかな。あのシーンが『ゾンビ』を最後まで観られるかどうかの“恐怖の耐性テスト”だね。

ケン・フォリー

ゲイラン・ロス 映画が始まって3分の1くらいまでは暴力と恐怖に溢れているけど、なかでもSWAT(アメリカの警察特殊部隊)が急襲するアパートの地下で沢山のゾンビが蠢いてるシーンが怖いんじゃないかしら。そのあたりを過ぎてしまえば、最後まで観られるはず。あの地下にいたゾンビたちは、プロの俳優ではないの。どんな役でもいいから映画に出たいって、1日1ドルくらいで雇われた人が多かったと思うわ。

ケン・フォリー アパートのくだりでは、SWAT隊員が住民の頭をショットガンで吹っ飛ばすシーンも有名だよね。あれはダミーを使った特殊効果で、派手に爆発させられているのを実際に見ていたよ。個人的に恐怖を感じるのは、やっぱりアパートのシーンになるけど塞がれたドアをSWATがブチ破ったら一斉にゾンビが飛び出してくるところかな。なんだか「もう、どうにもできない」というリアルな恐ろしさが迫ってくるよ。

©1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.

――ゾンビという“蘇った死者”に対して、アメリカの人々はどのような感情や考えを抱いて対峙しているのでしょう。

ケン・フォリー 南米では死者を敬うところがあるし、カリブやメキシコでは“死者の日”なんて祝祭を催している。ハイチでは、死んだ人間を埋めて、また生き返らせるという試みが実際に行われているなんて聞くけどね。国によって受け止め方が違うと思うけど、アメリカ人はゾンビのことをあまり真剣には受け止めていないね。死者をゾンビにする呪術があるとされるヴードゥー教が根付いているニューオリンズとなると、また話は少し違うとは思うけど。