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『ゾンビ』が世界中に“ゾンビの種”をばら撒いた

ゲイラン・ロス いまやゾンビは、人気のあるアイコニックな存在になっていると思う。『ゾンビ』を撮影していた40年前は、ゾンビなんて言葉はほとんど知られていなかった。かろうじて、ロメロがその前に撮ったゾンビ映画『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生』(68)を観た人が知っている程度だったと思う。ただ、『ゾンビ』でゾンビという言葉が一気に広がったのは間違いないわね。死者が生き返るなんて話は誰も本気になんてしないけど、その後に無数のゾンビ映画が作られたし、家族の愛情を絡めた悲劇的な『ペット・セメタリー』(89)といったヒネりのあるものも放たれたけど、やっぱりロメロのゾンビ映画にはかなわない。

 なんといってもストーリーやキャラクターがものすごくしっかりしている。そうした部分がコミカルな形で受け継がれた『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)みたいな作品も生まれるようになってきたようには思える。さらに最近では『28日後...』(02)のような疾走するゾンビも増えてきたけど、そうしたアイデアも世界中にゾンビという存在が波及していったからこそ。吸血鬼や狼男のような有名なモンスターもいるけど、ゾンビはウイルスのように世界に広がっていったと思います。死んだはずなのに蘇る理由が目に見えない、どういうものかはっきりわからない、それらを止めることもできないという恐怖を世界のみんなが感じているんじゃないのかしら。

ゲイラン・ロス

ケン・フォリー 『ゾンビ』が世界中に“ゾンビの種”をばら撒いたのは間違いないね。まずアメリカで初公開時に3週連続ナンバー1になって、そこから世界中に広がっていった。低予算でここまでヒットして、とほうもない影響力を誇った作品は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)があるくらいじゃないかな。

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ゲイラン・ロス 『ゲット・アウト』(17)も低予算で大ヒットしたうえに社会現象を巻き起こしたけど、あれもロメロと同様に怖いものを扱いながらも社会的メッセージを訴えていたからだと思う。『ゾンビ』も舞台になっているショッピングモールに生者も死者も群がる姿を通して、いきすぎた消費文化や資本主義を痛烈に批判しているのが特徴的だった。ホラー映画のみならず、映画はそういった社会情勢がもたらす恐怖や不安を反映させるところがあるわね。ちょっと質問から外れた答えになっちゃったけど、『ゾンビ』はそれだけ今日的なメッセージを感じられる映画ね。