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『カメラを止めるな!』の元祖、映画『ゾンビ』主演俳優が語った「社会のモラルが低下した時にゾンビは現れる」

ケン・フォリー、ゲイラン・ロス インタビュー

2019/12/15

genre : エンタメ, 映画

note

「地獄が満員になると死者は地上を歩く」理由

――残念ながら今回の『日本初公開復元版』ではカットされていますが、ケンさん演じるピーターがゾンビの現れた理由を「地獄が満員になると死者は地上を歩く」と語る場面があります。それぞれの死生観などを照らし合わせた、おふたりなりのゾンビが出現する理由があれば教えて下さい。

ケン・フォリー演じるピーター ©1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.

ケン・フォリー “灰は灰に、塵は塵に、土は土に”というキリスト教の言葉にもあるけど、そういった人間の生死にまつわる輪廻のひとつなんじゃないかなと思っている。人間が死ぬ一歩手前、生から死へと進んでいく途中がゾンビと呼ばれる状態なんだと思う。『ゾンビ』を撮る前からロメロはゾンビにまつわる伝説や民話を調べていて、それらから彼らがどこから現れてどこへ行くのかヒントを得たんじゃないかな。そして、あの「地獄が満員になると死者は地上を歩く」という名台詞も作られたんだろう。あれはヴードゥー教の司祭だったピーターの祖父が彼に伝えたという設定になっている。死から蘇ったのではなく、死の一歩手前にいるゾンビが、生き続けたい、生き残りたいとさまよっているんだよ。

 

ゲイラン・ロス ゾンビではないけどそれに近しい存在は、古代のインドやエジプト、聖書の時代からあるものだと思う。結局のところ、人間社会の終わりとしてゾンビが現れるんじゃないかしら。ロメロは非常に信仰心の厚い、伝統的なカトリック教徒だったから、しっかりとした善悪の観念やモラルを誇っていた人だった。どこかで彼は、この社会の倫理観が低下している、倫理上の一線を越えてしまったと感じていた。だからこそ、天国が満員になるのではなく、地獄が満員になって死者が地上を歩き出すと考えたと思うのよ。

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ゲイラン・ロス演じるフラニー ©1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.
 

――2017年に製作された日本のゾンビ映画『カメラを止めるな!(英題:ONE CUT OF THE DEAD)』は、製作予算300万円で日本興収31.2億円のヒットを記録しましたが、今回の『ゾンビ-日本初公開復元版-』も、40年の時を経て再び劇場公開させたいとクラウドファンディングを通じて739名のファンが出資し、1000万円以上の資金が集まりました。ゾンビ映画のカルト的人気の源はなんだと思いますか?

ケン・フォリー 5、6年前、ある映画祭で『ゾンビ』を上映したいという話があったんだ。なにしろ30年以上前の作品だし、この映画を観た観客たちが古めかしいと笑うんじゃないかと思った。そうなったら恥ずかしいから劇場の一番後ろに座って一緒に観ていたんだけど、いつしか自分が初めて作品を観た時のようにすごくワクワクしていたんだ。もちろん、私以外の観客もだよ。いつの時代に観てもそんな気持ちになれる映画なんて滅多にない。そこが人気の秘密なんじゃないかな。

 

写真=末永裕樹/文藝春秋

INFORMATION

映画『ゾンビー日本初公開復元版ー』
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次公開中
配給:ザジフィルムズ
https://www.zombie-40th.com/

『カメラを止めるな!』の元祖、映画『ゾンビ』主演俳優が語った「社会のモラルが低下した時にゾンビは現れる」

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