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賛否両論の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 タランティーノがあえて描かなかった“惨状”とは?

むかし、むかし、ハリウッドは……崖っぷちだった!

2019/09/15

 クエンティン・タランティーノが1969年のハリウッドを舞台に放った『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。バート・レイノルズと彼の専属スタント(後に監督となった)だったハル・ニーダムらをモデルにした、落ち目のスター俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とクリフ・ブース(ブラッド・ピット)が、チャールズ・マンソン率いるカルト集団に惨殺された女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)と絡むような絡まないような物語である。

 

映画マニアでLA在住だったタランティーノ 知らないわけがない

 映画史という現実と映画という虚構を巧みにクロスオーバーさせた語り口はもちろん、台詞が出てこない不甲斐なさに憤怒して自分の顔面を引っ叩きまくり、落ち目を指摘されて白昼のハリウッドで鼻水も垂らさんばかりに泣く、ディカプリオの“レオ様のかけらもない”熱演にも魅せられっぱなしの161分だった。タランティーノ最高傑作の呼び声が高いのも納得だが、プンスカしている映画ファンもわずかながら存在する。彼らの言い分はこんなところ。

「古き良きハリウッドを描いた作品として売り出しているけど当時はそんなことなかったはずだし、そのあたりにタランティーノはきちんと触れていない」とのこと。

 

 その指摘はたしかに正しいかも。むかし、むかし、ハリウッドは崖っぷちだったのだ。でも、映画マニアで当時LAに住んでいたタランティーノが、その史実を知らないわけがない。あえて、それを詳細に描かなかったのである。彼が描かなかったハリウッドの惨状とあえて省いた理由に迫りたい。