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コロナ休校で広がる“シビアな学習格差”……自習任せの「公立」とオンライン授業の「私立」

2020/04/30
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「子どもは新しい環境に馴染もうと緊張し、不安を抱えている。先生たちはそういう心情に注意を払いながら信頼関係を作ります。個々の状況を把握するには、授業だけでなく休み時間や給食、登下校時の様子を観察することも大切。土台作りもないうちにいきなり教材だけ与えても、子どもはかえって学習意欲を失くしたり、勉強嫌いになってしまうかもしれません」

私立では「生徒全員が専用のノートパソコンを持って……」

 公立校とは対照的に、私立の保護者は安心感を口にした。中学3年生の娘が中高一貫の女子校に通っているという母親(52歳)は、充実した学習内容をこう話す。

「生徒全員が専用のノートパソコンを持っていて、毎日オンライン授業が行われています。朝はメール形式の朝礼で出欠を取り、『体温測定しましたか?』などのアンケートに答える。午前中は国語と数学、英語の3教科の授業が設定され、午後には他の教科もあります」

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 数学では2種類のオンライン授業が実施される。教師の授業動画を見ながら教科書の問題を解くものと、「Qubena」という有料の学習サービスを利用するものだ。「Qubena」ではパソコン画面に表示された課題をタッチペンで解答、AIが正否を判定するなど個人に適した学習内容に誘導する。

※写真はイメージです ©iStock.com

 公立校の教師が「むずかしい」と話した実技系の教科もある。たとえば家庭科は「手づくりマスクの型紙」が紹介されたり、家庭での食事作りを写真や感想文で記録するよう専用のシートが配布されている。

「具体的な内容が示され、先生からはこまめにメッセージが送られる。子どものやる気をじょうずに引き出してくれるので、親としても満足しています」

 年間の授業料は約100万円。「満足」の対価として安いか高いかは判断が分かれるだろうが、学校ごとの学習格差は歴然だ。

 すべての子どもに、「学ぶ」という基本的な権利をどう保証するのか。さらなる休校延長を前に教育行政の早急な対応が求められる。

スマホ廃人 (文春新書)

石川結貴

文藝春秋

2017年4月20日 発売

コロナ休校で広がる“シビアな学習格差”……自習任せの「公立」とオンライン授業の「私立」

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