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『鬼滅の刃』にどハマりしている人こそ『ガラスの仮面』を読んで欲しい3つの理由

『鬼滅の刃』にどハマりしている人こそ『ガラスの仮面』を読んで欲しい3つの理由

2020/05/11
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バラを触っただけで枯らせてみせる亜弓さんがスゴい

 このエピソードが掲載された単行本16、17巻のおもしろさたるや尋常ではありません。とにかくひたすら亜弓さんがかっこいい。レッスン中からして「あなたのような方と共演できて光栄ですわ亜弓さん」とのこのこ近寄ってきた乙部のりえに対し、亜弓さんは「あなたの本当の実力と才能がどんなものか楽しみにしていましてよ」と威嚇。わけがわからず「なぜわたしが姫川亜弓に敵意をもたれなきゃならないの…?」と混乱した乙部のりえは、本番直前に牛乳を6杯も飲み干します。

 本番では、レッスン中には抑えていた実力を遺憾なく発揮し、乙部のりえを圧倒する亜弓さん。いったいどういう特殊効果なのか、バラを触っただけで枯らせてみせるという芸当まで見せつけます。観客はもはや乙部のりえなど一顧だにしていません。舞台は亜弓さんのワンマンショーとなりました。

 終演後、亜弓さんとの実力差を思い知った乙部のりえはふと気がつきます。「北島マヤ…? 姫川亜弓の認める唯一のライバルですって…! 天才だったんだわあの子…! 敗北だわ北島マヤに…!」ひぃっ……ガクン……ガクガク……。このカタルシス! 忙しい方はこの16、17巻だけでも読んでほしい。そして読めば大半の方はマヤ派から亜弓派に寝返るのです。

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その2)「家族を失った者の物語」だから主人公のモチベーションが半端ない

 吸血鬼を扱う以上、「血」は欠かせないアイテムとなります。そしてその「血」は血族、つまり家族のメタファーでもあります。だから両作品ともに「家族」は重要なキーワードとなっています。

『鬼滅の刃』は家族が鬼に惨殺されるところから始まります。唯一生き残ったものの鬼になってしまった妹・禰󠄀豆子を人間に戻すべく、炭治郎は旅立ちますが、家族の無念と妹の命を預かっているだけに、炭治郎のモチベーションは半端ないのです。そういえば疑似家族を形成する鬼も登場しますよね。

2020年10月には劇場版の公開が予定されている『鬼滅の刃』(公式サイトより)

 一方の『ガラスの仮面』も負けてはいません。早くに父を亡くし、母子家庭で育った北島マヤは、もはや失うものはなく、お芝居だけが心の拠り所ですから、どんな試練にも果敢に立ち向かいます。

 その勢いは単行本1巻からフルスロットル。ラーメン屋に住み込みで働くマヤは、「椿姫」の舞台のチケット欲しさに、大晦日の年越しそばの出前120軒分を1人でやり遂げます。(なぜラーメン屋なのに年越しそばを……)という素朴な疑問を読者に抱かせる間もなく、そのまま冬の海にダイブ! それを見ていたラーメン屋の娘に、「○○○○…」と、ここには書けない差別語をつぶやかせるのでした。