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特集
どうする保育園。どうなる待機児童。 国会議員、地方自治体トップ、当事者に連続インタビュー

渋井 哲也
2017/08/18

松戸市長・本郷谷健次インタビュー「財政力競争になれば、東京に保育士を取られてしまう」――どうする保育園 #5

女性活躍社会のため、国は実効性のある政策を。

 都内への交通アクセスがよく、「共働き子育てしやすい街〜地方編」(日経DUAL発表)のランキングで5位と評価されている千葉県松戸市。首都圏では様々な自治体で保育士の争奪戦になっているが、松戸市では先取りのサービスも実施するなど独自の取り組みをしている。

 東京に近い首都圏の苦悩を本郷谷健次市長(68)に聞いた。

待機児童はゼロになったけれど……

――待機児童の現状認識をお願いします。

本郷谷 女性も社会参加するようになり、社会で子どもを育てる体制を組まなければなりません。共働きをしないと生活が苦しいという現状もあります。市としては子育て政策を先取りするくらいの気持ちでやっています。待機児童対策というよりも、社会で子どもを育てる環境を整備していきます。

 現実の課題としては、子どもたちの保育園への入所申し込みが毎年500人増えていること。つまり、定員を500人増やしても、待機児童数はそのままです。しかし先取りの政策をすることで、2年前から待機児童がゼロになりました。ただ、これは国の基準であり、実際には要望している人がみんな保育園に入れている状態ではありません。

2010年から松戸市長を務める本郷谷氏 ©渋井哲也

――年齢によってもニーズは違いますか?

本郷谷 保育園に入所した子どもの割合を年齢別に見ますと、0歳で15%、1〜2歳が35%です。3〜5歳では(幼稚園とあわせて)95%。3〜5歳の内訳は、35%が保育園、幼稚園が60%。3歳以上は対応する施設が充実しています。一方で、0〜2歳では待機児童が多く、特に1〜2歳の保育需要が高く、施設が間に合っていません。

 幼稚園の定員は1万人ですが、実際に入園しているのは7000人。幼稚園は施設オーバーです。一方、保育園は定員に対して100%を超えています。保育園を作れば作るほど、幼稚園から保育園に移っていく傾向です。3〜5歳用の保育園を作っても、幼稚園の施設を余らせてしまいます。幼稚園を活用して、保育需要をまかないます。

 1〜2歳児向けには、小規模保育所を作っていかないといけません。ここ2、3年で小規模保育所を45ヶ所作りました。松戸市内にはJR、私鉄をあわせて23駅あり、各駅前に小規模保育所を整備しました。やはり街中で一番便利なところは駅です。駅近くで空いている店舗や空きマンションを活用しています。

 3〜5歳はできるだけ幼稚園を活用し、延長保育をするようにしています。ただし、幼稚園はこれまで「保育」をした経験がないため大変です。幼稚園教諭とは別に保育士を雇わないといけません。幼稚園で預かり保育をすると保護者負担が大きくなりますが、保育園で預けても幼稚園で預けても、トータルの費用負担が変わらないようにしています。具体的には、差額の月額2万5000円を保護者へ補助しています。

 女性の就労が進むにつれて、2022年には1〜2歳児童の保育園利用が60%になっていくと言われています。現状のままでは、保育園の定員が25%足りない。松戸市は1学年で約4000人です。1歳でも2歳でも各1000人分、加えて0歳児の増加分もあります。1つの施設で定員20人として、100を超える施設が必要です。社会のニーズに合っていません。

――保育士の確保が大変そうですね。

本郷谷 施設を増やすと、保育士が必要になります。小さい子には4、5人に1人は保育士が必要となります。4人に1人としても、定員が1000人分増えれば400人は保育士が必要です。確保体制が重要になりますが、市で単独でやれることはやります。

 保育士確保のため、東京都では保育士の給与補助を月額平均4万4000円とする方針を決めていますが、松戸市で保育園を経営している事業者からすると、非常に不安感が出ています。松戸市は江戸川を渡れば東京都です。こういう問題は国がちゃんと政策を打ってくれないと、疑心暗鬼になってしまいます。我々も保育士確保のために追随しなければならない。財政力競争になり、現場は大混乱に陥る恐れがあります。

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