「子育てがしやすい街」として評判の千葉県浦安市。3月末に就任した内田悦嗣市長(52)は、市職員時代から子ども施策に関心を寄せてきた。県議会議員時代には、児童虐待防止対策で、自民党県連のプロジェクトチーム(PT)のリーダーとして活躍した。

 街づくりの歴史的背景を踏まえた上で、教育と保育が連動した待機児童対策を行っている。

浦安はガラパゴスだった

市議、県議を経て市長に就任した内田氏 ©渋井哲也

――子ども施策にはどのような関心がありますか?

内田 県議会議員時代(2007年4月〜2017年3月)は、自民党県連の児童虐待防止対策PTのリーダーで、「千葉県子どもを虐待から守る条例」の発議者でした。子育ては大変ですが、虐待されている子の60%は実母が加害者です。一番頼りにしている親から虐待されています。なんとかできないかずっと考えてきました。そのため、県議のときに児童相談所の拡充と条例を作ったのです。

――子ども施策への関心はいつからあったのでしょうか?

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内田 浦安市役所職員の頃(1988年〜2002年)からです。企画部局が長く、様々な子ども施策に関わってきました。勉強し、調べていくうちに、虐待でもいろんなケースがあることを知りました。

 虐待というと、当初は私も普通の人と同じように、親が子どもを殴ったりとか、しつけの行き過ぎという範疇かな?と思っていました。しかし、もっと大変なのはネグレクト(育児放棄)だったりします。

 衝撃的だったのは、本に書かれていることが実際に起きている事実です。たとえば、代理ミュンヒハウゼン症候群。子どもを病気にさせて、点滴をいじってまで、病気が治らないようにするのです。「本には大げさに書いてあるんだろう」と思っていました。しかし、千葉県内でも何件か報告がありました。

 県議のとき、他の議員約20人と一緒に千葉県中央児童相談所に行きました。畳の部屋でずっと正座をしてテレビを見ている子どもがいました。決して、笑いません。「なぜ正座をやめさせないのか?」と聞きますと、「あの子は正座をしないと安定しない」と説明を受けました。親にずっと正座をさせられていたというのです。こうした経験から、子どもにとって一番良い環境とは何かを考えるようになりました。

――待機児童については、どんな現状認識でしょうか?

内田 浦安市は「子育て支援が充実している」というイメージがあります。そのため、子育て世代の転入者が多く、保育需要が増えています。待機児童の数は今年4月1日時点で165人。千葉県内で3番目に多い。しかし、将来的には保育需要が減少することも考えられます。5年後、10年後、20年後を見据えて政策を考えています。

 保育園と幼稚園を連携させることも課題です。浦安はもともと貧乏な街です。1969年に東西線が開通するまで電車が通っていませんでした。その後、宅地開発が急速に進みます。こうした事情から浦安では幼稚園も保育園も公立が多い。そのため、幼保一元化の「認定こども園」への移行がうまくいきました。移行がスムーズだったのは、浦安がガラパゴスだったことが一因です。

 保護者への経済的支援もしています。「認定こども園」の幼稚園部分だけの利用の場合、月5000円の負担です。30年間、月謝をあげていません。他の自治体でも同じ時期に通う第2子は半額、第3子以降は無料という制度はあります。しかし、浦安では、第1子が卒園して小学生や中学生になっても同じ対応です。子どもたちにお金をかけるというのが基本方針です。

 待機児童は、他の自治体と同じように、2歳までが多い。165人の待機児童のうち、1歳が113人。2歳が33人。3歳が19人です。4、5歳は「認定こども園」という受け皿がありますので、0人です。ただ、0〜2歳児は需要が読めません。企業の育休制度が充実してくれば、需要は減ります。一方で、働きたい女性が増えれば、需要は増えます。