子どもが減っても保育需要は高まっている
――子育て世代の人口は増えているのでしょうか?
内田 2011年3月の東日本大震災では液状化の被害が出ました。そのため、一度、人口は減りました。震災の時でも減ったのは、賃貸に住んでいた人たちです。特に社員寮として会社等が借り上げている物件は避けられています。そうした事情で、一時期、賃貸の需要は下がりました。しかも、持ち家を購入した世代も、成熟化によって子どもが減りました。
しかし、子どもの人数が減ったからといって、保育需要は減りません。共働き世帯が増加したり、働く女性が増えます。また、転入者のほとんどは核家族で、子どもの面倒を見てくれる人がいません。こうした事情もありますので、むしろ保育需要は高まっています。
――保育園が整備されると、保育士不足になりませんか?
内田 保育士の処遇改善をしています。昨年度から月額3万2500円、ボーナス時は4万円の上乗せをしています。千葉県もようやく重い腰を上げ、2万円を加算するうち、1万円は県の負担です。すでに市町村が独自に改善している場合は県が1万円上乗せ。浦安市の保育士には月額4万2500円が上乗せになります。
また、昨年度から家賃補助をしています。法人が借り上げる宿舎の場合、部屋1室あたり月額8万2000円を上限に、市が8分の7を補助しています。特に浦安市は東京都と隣接しています。東京都は財政力もあり、利便性もあります。対抗するにはきちんと処遇改善をしないといけません。
――質の面ではどうでしょうか?
内田 保育士の研修は当然しています。市の主催する研修会には民間の保育園からも参加しています。認可外の保育園は11園ありますが、3園は認証保育所です。補助金や助成金のからみもあり、職員が現場を見に行きます。浦安市では「教育部門」と「健康福祉部門」の垣根を取り払い、2007年度から「こども部」にしています。そのため、大人なのに「こども部長」がいます。
浦安では私立幼稚園は後発です。そのため、特色を持たせようとしています。一方、公立の7園は、公立の強みを生かし、学校につなぐための施策の一つとして「就学前『保育・教育』指針」を作って役立ています。保育士は、学校の教諭と情報交換をしています。新しい保育園ができれば、保育士らが訪問し、必要に応じてアドバイスをするようにしています。
保育現場での死亡事故は聞いたことがありません。まだ就任して間もないですが、公立の園に訪問しています。現場では、子どもを優先に物事を考え、安全に保育をしていくためにどうすべきかを考えています。隣接する江戸川区に「追いつき、追い越せ」というのが目標です。
――国や県に要望することはありますか?
内田 県に対しては、お金を出して欲しいですね。2万円加算のうちの1万円では少ないと言いたいです。それでもやっと重い腰を上げたのですが……。
国に対しては、教育も保育も「子ども」という考えで統一してほしい。資格を見ても、幼稚園教諭と保育士とバラバラです。また、保育や教育は全国一律であるべきナショナル・ミニマムです。保育士の取り合いにならない仕組みに変えるべきです。