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性別が変わった私が体感した「女性を見下す視線」と「トランスジェンダーを審査する目」

2020/07/22
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 女性専用車両の利用も、実は怖かったりします。なぜなら、馴染みのないかたは想像がつかないかもしれませんが、TwitterのようなSNSなどでは、トランスジェンダーの女性が女性専用スペースに入ることに憤る暴力的な言葉があふれているのです。それをよく知っている私には、どうしても「女性専用車両に避難して、そこでバレた場合にトラブルに発展しないだろうか」という思いが頭をよぎってしまうのです。いまでこそどうも女性専用車両などにいても周りのひとは特に何とも思っていないようだとわかりましたが、当初はどこにも自分が安心できる場所はないような気分でした。いえ、いまでも女性専用スペースでは少し緊張し、目立たないように心がけています。

©iStock.com

女性の語ることに、トランスジェンダーの語ることに耳を傾けて

 この記事を依頼されたとき、どうしても語りたいことがふたつありました。ひとつは、性別移行の経験に照らして考えると、女性への蔑視というのは本当にリアルで、それはただただ性別だけを理由に理不尽に生じているとしか思えない、ということです。そしてもうひとつは、そのように蔑視を受けるだけでなく、女性であり、しかもトランスジェンダーであるということが、さらに困難を増しているということです。

 ちょっとずつでもいいんです。ちょっとずつでいいから、女性の語ることに、トランスジェンダーの語ることに、耳を傾けてみて、少しだけ意識してみてもらえないでしょうか。そして、例えばご自分の主催するイベントでどうも女性たちを圧倒しようとしたがる男性がいるようだとか、どうもこの空間はトランスジェンダーのひとが安心できる場所だというメッセージが足りていないようだとか、そうしたことに気づいてほしいのです。そうしたことについて、ちょっとの工夫を重ねていけば、いまよりも少しずつ、でも確実に、いろいろなひとにとって安心して過ごせる社会に近づくのではないでしょうか。

性別が変わった私が体感した「女性を見下す視線」と「トランスジェンダーを審査する目」

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