昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載尾木のママで

尾木 直樹
2016/08/25

内村ママの子育て術

source : 週刊文春 2016年9月1日号

genre : ライフ, 教育

 

 リオ五輪、盛り上がったわね~。選手たちの熱戦に感動して、ボクも連日寝不足よ。特に体操男子団体と個人総合で金メダルに輝いた内村航平君、本当におめでとう! 先日、お母さんの内村周子さんにお会いしたので、ボクも応援に力が入ったわ。

 内村家は両親ともに元体操選手で、体操クラブを経営していると聞けば、誰もが「英才教育をしたに違いない」と思うでしょ。でも違うのよ! 親はサッカーや野球を勧めたのに、航平君が「好きな体操をやりたい」と言ったの。「子どもが楽しそうにやっていたことを応援しただけ」という姿勢がすばらしい! 脳科学的に見ても「好きなことを極める」ことは脳にとって一番の栄養になるのよ。

 それに周子ママは、「勝て」とか「優勝して」という言葉を今まで一度も言ったことがないんですって! 親の期待は子どもの重荷になる。「期待の『き』は(息子に)嫌われるの『き』だ」と考えて、子どもに期待しないことにしたとか。「生きていてくれれば、それだけでいい」。そんな子育て論にすっかり感心しちゃった。

リオ五輪男子個人総合の鉄棒で完璧な着地を決め金メダル!
Photo:Kyodo

 さらに驚いたのが「息子のメダルや賞状は家に飾らない。金メダルに触りたいとも思わない」という話。ホント?と疑ったけど、「唯一飾っているのは小学生の大会の参加賞。ビリだったけど夢中でがんばった姿が宝物だから」と聞いて納得したの。

 今回リオで金メダルが決まったとき、周子ママが観客席で涙ぐんでいたでしょ。あれは勝利の喜びというよりも、「よくぞ六種目、無事にやり遂げた」という安堵の涙なのよ。こうした新しい母親像や親子関係が、日本にもっと広がってほしいわ。

 航平君に肉薄したベルニャエフ選手もすばらしかった! 巷では「失敗しろ、と念じながら彼の演技を見た」なんて人もいたみたいだけど、それは五輪精神に反しない? もっと成熟したスポーツ文化が必要ね。