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「放っておけば悪くなるだけ」認知症の症状が改善しなかった人の特徴とは

『認知症 全部わかる!』より

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「あの話、忘れちゃったの?」

 さらに、シナプソロジーと呼ばれるプログラムの後、回想法(同前)と呼ばれる心理療法を行ってこの日は終了。

「MCIから戻るために有効とされるプログラムのうち、何がどれだけ効果があるかは人それぞれです。筋トレなどで高い効果がある人もいれば、音楽療法や回想法などで心が落ち着き、回復に向かう方もいます。何が効果的なのかは、やってみなければわかりません。

 有酸素運動、認知トレーニング、社会交流、ボランティアなど、できることは全てやること。ただ、あまり考えすぎると心理的抵抗も大きいはず。あらたに始めたことを習慣化して、生活の中に取り込んでいくことです」(朝田氏)

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 高橋義博さん(仮名・67)は、妻の助言もあって昨年から金沢医科大学病院の認知症予防教室に参加した。

「4、5年ほど前からですが、家内と話していると、『あなた、あの話、忘れちゃったの?』と指摘されることが多くなりました。その話自体を思い出せないことが多く、まるまる忘れていることも。自分も七十に近くなったし、年相応だと思っていましたが、家族に迷惑をかけるのが嫌なので、思い切ってもの忘れ外来で診察を受けてみることにしたんです」

 本人はこう話すものの、来院当時はあまりいい状態ではなかったという。

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 前出の入谷氏が話す。

「受け答えにも、ちょっと心もとないところがありました。MMSEは26点でした」

 高橋さんは、手先を使う伝統工芸の職人として、40年以上のキャリアがある。仕事が身に付いているため、普段の仕事で支障をきたすことはなかったが、そのぶん自分では症状に気付きにくかった。