最初に断っておきますが、これは『鬼滅の刃』について書いたものではありません。『鬼滅の刃』をとっかかりに、「歴史と時代認識のずれ」についての話をしようとしているので、『鬼滅の刃』についても触れますが、作品そのものについての分析や評論はしていません。その点はご了承ください。
さて。
『鬼滅の刃』の7話にでてきた鬼の話から始めたい。
単行本でいえば1巻の最後に収録されている。アニメだと第4話。DVDだと2巻の2つめに入っている。
「今は明治何年だ」と聞く鬼
「最終選別」の話。
主人公の炭治郎は“鬼殺隊”に入るための最終選別で「藤襲山(ふじかさねやま)」に入る。
そこで“大型異形の鬼”が現れ、炭治郎に「今は明治何年だ」と聞く。
炭治郎は「いまは大正時代だ」と答える。(何年であるかは教えていない)。
それを聞いて異形の鬼は「アァアアア 年号がァ!! 年号が変わっている!!」と叫びだす。
「まただ!! また!! 俺がこんな処に閉じ込められている間に!! アァアアア」と恨み言を言い出すのだ。彼を閉じ込めたのは炭治郎の師匠でもある鱗滝で、彼を恨んでその名前を連呼する。
炭治郎が「どうして鱗滝さんを……」というと「知ってるさァ!! 俺を捕まえたのは鱗滝だからなァ。忘れもしない四十七年前。アイツがまだ鬼狩りをしていた頃だ。江戸時代……慶応の頃だった」
ちなみにアニメでこの第4話が放送されたのは平成31年の4月27日。
4日後に改元があり令和元年となった。
その不思議な符合は、当時かなり話題になっていた。
この「藤襲山の異形の鬼」のセリフが、『鬼滅の刃』の時代設定を考証するポイントとなっている。
捕まったのは1865年から1868年の間
慶応年間は、西暦でいえば1865年から1868年まで。
その47年後は、1912年から1915年となり、大正元年(7月30日までは明治45年)から大正4年のあいだとなる。「藤襲山」のシーンはそのどこかに当たるわけだ。
べつだん『鬼滅の刃』の舞台時期を特定したいわけではないから、だいたいそのあたり、ということがわかればいい。
この鬼は慶応年間に捕まり、大正になってすぐのころ炭治郎と出会う。
巨大な鬼に変身しているが、彼にも人間だった時代がある。「お兄ちゃんに手を繋いでもらいたかった記憶」だけが残る哀しい鬼である。
彼が慶応年間に捕まったシーンが描かれている。