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熊田 梨恵
2017/09/25

なぜ男の10人に1人が「産後うつ」になるのか

政府の「イクメン」推進は根性論にすぎない

男の「産後うつ」の罹患率は女性と同じ

 産後うつは女性だけの病気ではない――。「ワンオペ育児」など、母親の子育ての孤立化が社会問題になっている今、父親の理解とサポートを強く求める風潮は強くなる一方だ。だが、現代の父親もまた、慣れない育児への戸惑いや経済的負担感、長時間労働などから、ストレスをためやすい状況にある。

 実は、産後うつになる男性は約8%というカナダのカルガリー大学などの調査がある。女性の約10%とほぼ変わらない数字だ。

 妻の産後、自分もうつになった加藤雅史さん(仮名、46歳、大阪府)が語る。

「妻が産後うつで療養することになったため、私が妻と息子の面倒を見ることになり、育児休暇をとりました。一日中、育児と家事、そして妻の面倒に追われて、今度は私の方が精神的に参ってしまい、アルコールの量が増えました。しかも妻の実家で療養したため、居候の私は『マスオさん』状態。近所に知り合いもおらず、ストレスを発散できなくて、追い込まれたのです」

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真面目で優しい人ほど要注意

 日本では、兵庫医療大の西村明子教授らの2015年の調査で、産後4か月の807人の父親のうち、13.6%にうつ病のリスクがあることが分かった。

 国立成育医療研究センター政策科学研究部の竹原健二室長らの2016年の調査では、産後から3カ月の215人の父親に、産後うつのリスクが一度でもあった人が約17%いた。産後2カ月でリスクありと判定された人は、そうでなかった人に比べて「泣いているのを放っておく」「大声で叱る」「お風呂に入れない、着替えをしない」など子どもへの接し方がその時点で悪くなっている傾向が7.7倍高かった。

 竹原室長は、「産後うつになりやすいのは真面目で優しい人だと思います」と話す。また文献などによると、パートナーの産後うつ、夫婦関係が良くないこと、経済的不安定、雇用形態なども父親の精神状態に大きく影響する。

 前出の加藤さんは、「それまでの仕事は外に出ることが多かったので、ずっと家にいて、すべての家事や育児をしなければいけないというのはかなりキツかったです。子どもに関わることが面倒になり、離れたいと思うようになりました。また、育児休暇に入って、収入が激減したことへの不安、そして職場復帰後に元のポジションに戻れるのかという不安が常にありました。働いている時から、妻の体調不良をフォローするために、早退することが多かったので、『あいつは使えない』というレッテルを貼られてしまった雰囲気がありましたから」と、仕事に関する不安が強かったと話す。

 男性にとって、家族が増えるということは幸せなことである一方、責任が大きくなることでもある。安定して収入を得られるかという不安は男性に大きくのしかかってくる。