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大倉 崇弘
2017/10/04

現役警察官が書いた「警視庁 生きものがかり」ができるまで

大倉崇裕が『警視庁 生きものがかり』(福原秀一郎 著)を読む

『警視庁 生きものがかり』(福原秀一郎 著)

 十年ほど前から、十姉妹(じゅうしまつ)を飼っている。喧嘩をほとんどせず、数羽がぎゅっと身を寄せ合っている様は、何とも言えずかわいらしい。

 そんな十姉妹飼育の体験を元に、私は「小鳥を愛した容疑者」というミステリーを書いた。その作品は思いがけず好評でシリーズになった。さらにありがたいことに、今年「警視庁いきもの係」というタイトルでドラマにもしていただいた。

 さて、ドラマの放送を控えたある日、ネットで驚くべき本を目にする。「警視庁 生きものがかり」。書かれたのは、現役の警察官とある。動物を扱う部署って、本当にあったんだ!

 著者の福原秀一郎さんが所属しているのは、警視庁生活安全部生活環境課。担当は「環境事犯捜査」、つまり、産業廃棄物の不法投棄の取り締まりや絶滅のおそれのある動植物の密輸・売買事件などの捜査だ。

 子供のころから動物が好きで、一度は獣医を目指された福原さん。警察官となってからは、「十八番をつくれ!」という上司の言葉を胸に、ほとんどゼロの状態から「生きものがかり」を作り上げられた。

 本著には、そんな福原さんの奮闘から、稀少動物の密売ルート摘発に至るまでが生々しく描かれている。ネタを取り、内偵をし、時にはエス(スパイ)まで使い、外国にもおもむき、ついに黒幕を追い詰めるくだりなどは、まさに圧巻の一言だ。

 むろん、様々なトリビアも満載。扱う動物はすべて「頭(とう)」で数えるとか、バードウィークには鳥の事件を扱うといった「時期もの」がある、などなど。

 登場する動物も、ミスジヤマガメからスローロリス、果てはレッサーパンダまで様々だ。

 そんな動物たちではあるが、警察官の目線から見れば、彼らは重要な証拠品でもある。面倒をみて、その後の身の振り方も考えてやらねばならない。それもまた、「いきもの係」の重要な役目なのだ。罪を憎んで人も動物も憎まず。厳しくも優しい、珠玉の一冊である。

ふくはらしゅういちろう/1955年鹿児島県生まれ。警視庁生活安全部生活環境課勤務。希少野生動植物密売捜査において、全国で唯一の警察庁指定広域技能指導官に指定された「希少動物専門の警察官」。

おおくらたかひろ/1968年京都府生まれ。推理作家。著書に『クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係』『秋霧』など。

警視庁 生きものがかり

福原 秀一郎(著)

講談社
2017年8月4日 発売

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